「なまえ……」
「なあに環。甘えたさんだね」


抱きつくというよりしがみついてくる天喰になまえは笑って大人しくしていた。天喰は時々これでもかとなまえを求めてくる。このまま自分といてくれるだろうか、離れていかないだろうか。そんな心配を呟きなまえをきつく腕の中に閉じ込める。天喰に言葉だけでは伝わらないことを知っているなまえはよしよしと頭を撫でた。


「好きだよ環……これからもずっと一緒」
「……わからない。なまえは素敵な人だし……俺よりすごい人なんてたくさんいる……」
「そうかな。私は昔から環が一番すごいって思ってるよ」
「そんなことない、なまえのほうがすごいに決まってる……」
「ほんと?」


環に言われるとそんな気がしてくる、となまえが冗談交じりに笑うと突然天喰が首元に吸いついてきた。びくりとしたがなまえはされるがままだ。ちゅう、と音のあと口を離した天喰の小さく笑う声がしたのでおそらく痕をつけて満足したのだろう。このあとはきっと……となまえが予想してすぐ天喰が勢いよく自分から距離を取った。顔を赤くした天喰は手で口元を隠して泣きそうな顔をしている。


「ご、ごめ……っ」
「泣かないで環。怒ってないよ」


感触がした場所は多分制服じゃ隠せないなあ、とは思うけど。天喰はよくキスマークをつけたがる。つけようと思っているのではなく無意識につけているのだそうだ。つけられる度に謝られているが、なまえは天喰にキスマークをつけられるのは嫌いではなかった。天喰はなまえが自分のものではなくなってしまうのではないかと不安になり痕をつける。一方なまえは天喰に求められることに幸福を感じていた。言葉だけではなく態度でも愛情を示してほしいのは天喰だけではない。


「ねえ環。私もつけたい。首出して」
「……え!?」
「はいちゅー」
「っわ、待って……!」


再度密着してなまえは自分と同じところにきつく吸いつく。何度か失敗してようやくつけられたころには天喰の顔はまさにタコであった。


「環、顔だけ"個性"使ってるの?」
「し、しぬ」
「ええ? 生きて環。ずっと一緒だって言ったよね?」
「……うん。一緒がいい」
「――知ってるよ」


何でも知ってるんだ、環のことなら。だからもっと求めて。天喰はなまえの後頭部に手をやり肩に顔を埋めさせてきた。天喰の腰の後ろで両手を絡ませて今度はなまえがしがみつく。


「なまえ……俺はここにいるよ」
「私もここにいる」


そうして二人はお互いが近くにいることに安堵し、目を閉じる。なまえは求められることに喜びを覚えている自分の姿に安心したように笑う天喰のことに気づくことはなかった。



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