「ねえなんでなまえちゃんと通形って付き合ってないの? 不思議っ」
「……えっ」


なまえとミリオが午後にあるヒーロー基礎学の授業について話し込んでいると突然ねじれがすっと間に入ってきた。ミリオが首を傾げたところで冒頭の台詞である。なまえはねじれの放った言葉を理解するのに時間を要した。というより、とても焦った。ミリオに何年になるかわからない拗らせた片思い。それがねじれにバレたと思ったからだ。しかし話を聞くとあんなにいつも一緒にいるのに男女の関係になってないなんて! という意味らしい。そんなことを言われても困るし、今まで何も言われなかっただけで普段から他の人にもそう思われていたのかと考えてしまうと恥ずかしくなる。


「私付き合ってると思ってた。でも違うんでしょ? 付き合わないの?」
「うーん」


ミリオの困ったような声で浮かれていた気持ちは一気に沈んでいった。そうだ、ミリオが自分を好きなわけがない。付き合っていると思われていた事実はなまえのことを何とも思っていないであろうミリオにとって迷惑以外の何物でもないだろう。さっと顔を青くしたなまえがぶんぶんと大きく首を左右に振りながらねじれに言った。


「は、波動さん……ミリオは、私のことそういう好きで見てないから……」
「えっ通形明らかになまえちゃんのこと好きだよね。私でも知ってる」
「何言って……」


ねじれから視線をミリオへと動かしてなまえは固まる。照れくさそうに頬をかき、顔を少しだけ赤く染めて眉を八の字にしたミリオがそこにいた。あれ、思っていた反応と違う。なまえはてっきり困り切って苦笑するミリオを思い浮かべていたのに、この反応ではまるで……なんて。都合のいいように考えてしまう自分が嫌だった。だって、そんなわけないのに。


「ほらほら、ここで言わなきゃ男じゃないよ! 通形!」
「……よし! そうだよね!!」
「そうだよー!」
「え、ええ……っ?」


意気込んだミリオにガシッと両手を握られてひゃあと小さく悲鳴を上げる。クラスメイトのいる教室内でミリオは大きく深呼吸をして言葉通り叫んだ。


「なまえ! 好きだよっ、付き合ってほしい!」
「よく言った通形ぁああ!!」
「ようやくくっつく!!」
「付き合ってなかった事実が恐ろしかったわ!!」


うわあああとクラスメイト全員の歓声が響きなまえはびくりと体を震わた。なぜクラスメイトが興奮しているのかもわからないし、言ってしまえばこの状況もわからない。ミリオは何と言ったのか……好きだと、付き合ってほしいと言っていた気がする。誰と? 手を握られ目の合っている自分以外に誰がいる。つまりミリオはなまえのことが好きで、なまえと付き合いたくて公開告白をして――


「私も、好き……!」
「なまえちゃん言い逃げしたよ。次英語の授業あるのに大丈夫かな。でもよかったね通形。なまえちゃんも好きだって! 知ってた? 両思いだね」
「……かわいい!」
「通形にやにやしないでー」



シュガーレイディ



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