「前々から思ってたけど、お前絶対私のこと好きだろ!」





いつも顔を合わせれば喧嘩ばかりの相手が、唐突にこんなことを言うもんだから思わず一瞬動きを止めてしまった。


そんの一瞬の出来事も、目の前で訳の分からないことを述べる女は見逃さなかったようで。





「うわ、フリーズしてるってことはガチアルか。何だかんだ隙の無いヤローだと思ってたけど、そうでもないみたいアルな」





誰が隙の無い奴でィ。


いつものような憎まれ口に対してそれを上回る憎まれ口を返そうとするが、何故か頭に浮かんだ台詞を言葉にすることができない。





別に、万事屋のチャイナ娘が好きだと思ったことは無い。


いつものように喧嘩をして、いつものように罵り合って、いつものように勝敗のつかない勝負をして…。


そんな日々が、ただ何となく日常になりつつあっただけ。


それだけだと思う。本当にそれだけ、のはずなのに。





「いいアルかぁ、お前。神楽様と付き合うってことは莫大な食費代を払うことになるってことネ」




「…食費代を払えば、俺の女になるってことかィ?」





違う。そんなことを言いたいんじゃない。



俺が、こんな奴のこと、好きなわけがない。


付き合うなんて、あり得るはずがない。





「私の食費がどれだけかかるか知ってるアルか?銀ちゃんなんか毎日家計簿見ながら顔を青くしてるヨ」




「そんなのお安い御用。これでも一応公務員なんでねィ」




「…お前、本気アルか?正直キモいアル。しばらく私に近付かないで。」





誰が好き好んでオメーに近付くか!と言い返したいところだが、どうやら本心は違うらしい。



今日は自分の本心が勝手に言葉を紡ぐ日だのようだ。自分でも驚くようなことしか言いやしない。





「酢こんぶ代もきっちり出してやるぜ?」





ほら、また自分でも驚くような台詞が口から出ちまったじゃねーか。






end.


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