きっと総ちゃんの大切な人なのね



「降ーろーせーヨーー!!警察がこんなことしていいと思ってるアルか!」



「うるせェ。黙って乗ってろィ」





真選組と書かれたパトカーの車内で甲高い声が響く。



ハンドルを握る沖田の横で誘拐アル!と暴れる神楽は、散歩をしている途中に無理矢理パトカーに乗せられたのだった。


勿論神楽にはパクられる覚えも無く、赤信号で止まった瞬間に降りてやろうと隙を窺っていた。





「…ドライブデートがしたいなら素直に言うヨロシ」



「素直に言ったところで大人しく付き合っちゃくれねーだろィ」



「せめて行き先を言うアル。無理矢理車に乗せられて行き先も分からずに連れられるなんてお前私を犯すつもりアルか!助けて銀ちゃんんん!」



「誰がオメーみたいなガキを犯すかよ。そういうことは乳が揉めるくらい育ってから言え」



「うぜええ!揉もうと思えば揉めるくらいはあるアルよクソサド」



「ハイハイ。おっ、もう着くぜ」





そう言って沖田は山道に車を停め、後部座席から何やら荷物を下ろす。



そのままスタスタと歩いていく沖田のあとを神楽はブツブツ言いながらついて行く。


すっかり木々の葉は落ち、道が見えないほどの落ち葉が歩くたびに音を立てた。






「ここって…。」




道が開けたと思うと、そこには古い寺が建っていた。


そして、その寺の前にはたくさんの墓が並んでいる。





「ちょいとこれ持っててくれねーかィ。水汲んでくらァ」





沖田が抱えていた荷物は、花だった。


言われるがままそれを渡され、神楽は手元の色とりどりの花をしばらく見つめる。





「何で墓参りの花の中にクローバーが混ざってるアルか…」





カラフルな花の中に、場違いのように混ざっているいくつものクローバー。


センス無いアルなぁ、と呟くといつの間にやら戻って来ていた沖田に尺で頭を殴られた。





「こっちでィ」




とある墓の前で沖田が足を止めた。



墓に刻まれた名前を見て、神楽は漸くたくさんのクローバーの意味を知る。





「お前のマミーアルか?」



「姉貴。最近あんまり来れてなかったんでィ」





悲しそうに、しかし穏やかに微笑みながら墓に水をかける沖田の横顔を見て、神楽は黙って手に持っていた花を手際よく供えた。



勿論、クローバーがよく見えるように。





「どうせなら四つ葉のクローバーにすれば良いのにと思ったけど、姉ちゃんの名前がミツバだったら仕方ないアルな」



「センス無ェとか言ったの取り消したくなっただろィ」



「でもどうして私をここに連れて来たアルか?お前、こういうの人に見られたくないタチの人間だと思ってたネ」



「見られたくねェよ、いつもは一人で来るぜィ。…ま、たまたまオメーが散歩してたのが悪いってこったな」



「人のせいにしてんじゃねーヨ。まあでもせっかく来たから、いつも世話してやってますって伝えておくアル。…あと勢い余って弟を殺したらすみませんともな」



「人の姉ちゃんの墓の前で殺すとかそういうこと言うのやめろィ。それにお前に殺されるほど俺はヤワじゃねーっての。ほら、黙って手合わせろィ」





再び尺で頭を殴られる。


殴り返したいところではあるが、それこそ姉の墓の前で喧嘩するのも何だかなと神楽はその衝動を堪えて握りかけた拳を開いて手を合わせた。



そんな神楽の様子に少し笑った沖田も続いて手を合わせる。






多分、俺は姉ちゃんにコイツを会わせたかったんだと思いまさァ。…何でかは分かりやせんけど。




手を合わせながら、沖田が心の中で言葉を紡ぐ。



そんな弟に返事をするかのように、三つ葉のクローバーがそっと揺れた。




end.

タイトルはミツバさんからの返事です。


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