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こたつ大戦争
「さ〜む〜い〜ア〜ル〜〜〜!」
「テメー、肩までこたつの中にすっぽり収まってるくせして何言ってやがる」
沖田はまるで亀の如く、屯所のこたつに潜り込む神楽を睨む。
神楽が寝転がった状態でこたつに入っているために、沖田は脚しか暖をとることが出来ないのだ。
コノヤローと思いながら窓の外を見やると、今にも雪が降って来そうな灰色の空が広がる。
屋内でこれだけ寒いのだ。今日は外に出ないのが正解なのだろうが、こたつを独占されるのはどうにも納得がいかない。しかも、完全な部外者である不法侵入もどきのヤローに。
「わざわざ人の職場のこたつに入りに来たってのかィ?せっかくの休みだってのに邪魔すんじゃねーよ」
「さっきからごちゃごちゃうるさいネ。休みならこんな所でぐだぐだしてないで、もっとアクティブに外へ出て遊んで来るヨロシ」
「不法侵入で逮捕してやろーかクソガキ」
「だって万事屋寒いアル!今月は依頼が少なかったから、銀ちゃんがお金入るまではこたつ出しちゃダメって…。少しは貧しい市民を助けてやろうとか思わないアルかこの税金泥棒!」
そんな言葉と共に、冷え切った神楽の手が沖田の足首を掴む。
ひやりとしたその感覚に、思わず沖田の肩が跳ねた。
「つめて…っ!」
「ギャハハ!ビクッてしたアル!」
直に突然冷たいものをあてられたら誰でも驚くものだ。
しかし、驚いたとか些細な悪戯にイラッと来るよりも先に思ったことが一つ。
「そんだけ長いことこたつに潜ってんのにまだ手ェ冷たいとなると、お前冷え症なんじゃねーの?」
「うるさいアル、女の子は冷えが大敵ネ。身体冷やさないようになの一言が言えないなんてサドも男としてまだまだアルな〜」
せっかく人が心配してやってんのに、何だってんだ。
そうぼやく代わりに、沖田はこたつの中の神楽の腹に足を乗せるようにして無理矢理寝そべった。
「く、苦しいアル…!何するネ!」
「はー、あったけェや。お前、今から俺の湯たんぽになれ」
「何で私がお前の湯たんぽアルか!早くこの臭い足を退けるネ!」
「誰の足が臭いんでィ。何なら匂ってみるか?」
「ヤーメーローーー!!」
こたつの中で散々暴れまわったおかげで神楽は指の先までぽかぽかになった反面、畳の上には粉々になったこたつの残骸が飛び散っていた。
end.
ー ー ー ー ー
例の如く「だったら俺があっためてやろーか」とは言えなかった不器用な沖田くんの温め方。
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