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粟田口一期は初恋を実らせる

あとがきを申しますととにかく楽しかったです…。こうね、露骨な淫語は私も羞恥心というものがあるので中々書かないし恥ずかしいから口にも出せませんがたまに突飛なお話書くと出せるんですよね。私の精一杯の勇気ですよ、心してお読みください(笑)
普段は恐らく書かないであろう夢主像もとても新鮮でした。ビッチ。きっととっかえひっかえ出来ていただけあって顔は可愛いのだと思います。羞恥心もなくえっちなことを簡単に言えちゃうし足は開いちゃうしとんでもない子ですが、そんな彼女に残る昔の面影を確かに感じて、一期さんはますます盲目的に好きになるのだと思います。

個人的に「くっそw」と思ったシーンですが、よくお考えください。あれだけ気持ちが追いついてから〜、とか言って夢主を遠ざけておきながら野郎荷物にゴムを潜ませているっていう(笑)
一旦家に帰ってもしものことがあればとコンビニに馳せ参じたのかもしれません(笑)一期さんの葛藤が伺えます。お家についてみれば可愛らしい部屋着を纏った彼女がいるし、めっちゃくっついてくるし、何の生き地獄かな?と虚ろな目をしている時に男の人を誘う術に長けた彼女から「いいよ」とか太ももに手を置かれて言われるわけですよ。一期さん的にはそうとうな葛藤と我慢があったのでしょう。想うからこその我慢です。一期さんはよくがんばったとおもいました。(作文)

最後先輩と一緒にカラオケに行った流れは彼的にそうとう焦ったかと思います。
避けられているのも知っていましたし、気がこちらに向いているのも知っている一期さんは余裕ぶっこいていたんですよ。彼女は自分に惚れている。なんせ大学へ迎えに行って、彼女に会えなかった日は必ずあの、再会の日に行ったカフェで彼女は自分が座っていた席に腰掛けて紅茶を飲んでいるものですから自惚れてしまうのも仕方がない。


実は策士な一期さんの華麗な手口を説明いたしますとビッチ相手に焦らし続けて、彼女の空っぽだった心に愛情を注ぎ続けて満たすわけです。心は満たされても体は満たされない
わけですよ。男性遍歴がまさしくクソで、性生活も乱れておりましたから健全なお付き合いなどしようものなら欲求不満になること間違いないというのを知っていてするわけです。
彼女がどのような性行為を行ってきたか、それとなく行為中に聞いた彼は己の持てる技術全てで体を満たしてやるわけです。
彼女はそんなの知らない、怖いと言いながらも一期さんを受け入れ、最終的には拒む言葉もなく共に過ごすわけです。意図的に彼女を陥落させた一期さんは、必ず自分に傾いてくれると確証しているわけです。

他の男を頼ろうが、自分が与えた愛情と快楽には敵うまいと思うものの、作中で「淫乱に仕立て上げた野郎を殺してやりたい…」と言っていた通り独占欲は人並みにあるので慌ててカラオケ屋を駆け回ります。

見つけた先で、まだ抱かれていない所を見て彼は安心して、あのような態度を見せます。ここで怒れば彼女の元カレの如く「拘束が強い」と振られてしまう可能性があるのであえていつもどおりに。
そうしたところ可愛らしい告白を受けたので一期さんの積年の恋は実ったというわけです。なるべくしてなったのです。
そう思ったらなんとも計算高い男か、と思ってしまいますが、作中のリアクションは全て本物で好きだからこそ振り回されています。

んん、この説明をうまいことね、文章で説明できていたなら本当に素敵な小説なんでしょうけど今の私にはあれが精一杯でした…、精進いたします。


思ったよりあとがきが長くなってしまいました。
次の更新予定のお話の案を書きますと、一応本丸再建の続きか初詣の第二弾を、と思っております。

一期一振を甘やかそうとする主の空回り(お風呂回)と初詣のお話はタイムリーに連隊戦と掛けたお話にしよう、とは思っていたのですがもう正月終わったし、連隊戦ももう終わりに迫っているという。

更に申しますと私は次の木曜までお仕事お休みが無いので更新の見込みはない事を思えばもう書ける気がしませんが、正月終わっててもいいよ、初詣の話読んでやんよ、と受け入れていただけたら幸いです…年始早々躓きすぎです、おみくじは小吉でした_(:3 」∠)_



***



書くかどうかは別にして、思い浮かんだネタを吐き出したいと思います。私はプロフィールにも書いている通り腐女子です。夢も勿論好きですが、NL、BL、更に言うならGLも大丈夫な雑食です。

前に執筆させて頂きました「一期一振の想望に便乗する鶴丸国永」のようなお話がたまに書きたくなるので急に降ってきたネタをここに書きたいと思います。要素としては三日月がお鶴さんと体を交えますので苦手な方は逃げてください。

※BL混じりのお話をします。ご注意ください。


男らしい鶴丸さんもすきです。でも最高に美少女顔の鶴丸を見ていると鶴丸を男の体ながら雌のようにどろどろに溶かしてもやりたくなります。すみません性癖歪んでまして。普段は書きませんが。
そこでただただ好みである三日月さんに参戦していただきたいなと思い、今回お話を思いついたわけですが、案といたしましては下記のような感じです。私の原寸大プロットです。

―――

三日月に抱かれる鶴丸を目撃して、その妖艶さ、美しさに花に引き寄せられる虫のようにふらふら近付いて思わず頬を撫でて「鶴丸、」と口付けてしまう。すっかり欲情した主と三日月でお鶴さんをどうこうする話

見つかった鶴丸は絶望の表情を浮かべ、そんなお鶴さんが気にくわない三日月は主の前であろうとぶち犯します。主の前でいかされてしまった鶴丸は力なく畳に横になるけど、そんな鶴丸に一言「綺麗、」と言って主は咎めるどころか引き寄せられるように部屋に入って鶴丸に触れてしまう

三日月はお鶴さんが好き。お鶴さんは主が好き。主は事後のお鶴さんに一目惚れ

イメージは百合を犯す三日月(*´˘`*)

―――

最後の顔文字が語る私の糞っぷりをお分かり頂けましたでしょうか。こんなお話を夢小説サイトで書こうとしていることがまず間違いなのかもしれませんがすみません性癖です。少しでも共感いただけたなら幸いです。

とにかく3Pでも男性二人が女性を攻めるものより、関係なく交わっちゃうほうが最高にえろいと思うんですよね。いかがでしょうか。
赤裸々に話しすぎたのでこの辺でこのお話は終わっておきます。「あなた、疲れているのよ」と思って頂ければと思います。



***


没の供養をさせて頂きます。昔書いた「三日月宗近と花冷えの夜」の書き出しの没です。このお話を完成させるまでに二作の没が生まれたのでせっかくなのでこんなところに置いておきます。

見出しといたしますと@無糖の暗いイメージ/Aちょっと可愛らしめとなっております。間を置いたせいか全く書いた記憶がなく、読み返して吃驚いたしました。Aなんかは別のお話始まっちゃいそうです。どちらも中途半端で終わりますが、私が書きたかったものは「三日月宗近と花冷えの夜」ですのでへー、くらいに軽いお気持ちでお読み頂けると幸いです。少しでも妄想の足しになれば幸いです。



 @


「三日月さん?」
 私の声は聞こえているんだろうか。障子の向こうの影に声を掛けたがピクリとも動かず、反応すらなかった。可笑しい、彼は「俺はじじいだから夜は弱くてなぁ」なんて言っていたのに、今は月が高く上った深夜だ。だが、どう見ても障子に浮かぶシルエットは三日月さんで私は不思議に思い、よたよたと布団から起き上がり障子に指を掛けた。
 す、と音を立てて開いた隙間から月明かりが入りシルエットが明確になる。廊下で立ち尽くしている三日月さんの目は怪しく月を模した打ちのけを光らせていて何処か不気味だった。

「こんばんは、どうされました」

そう声をかけると三日月さんは躊躇い無く障子を開いてずん、と歩を進める。私は思わず一歩斜めに後退り結果として部屋に彼を招き入れてしまった。一言も話さない彼が何だか怖くなって「あの、」「三日月さん」「今日はもう遅いので、用ならば明日に御願い致します」と途切れ途切れに沈黙を埋めるように言葉を投げ掛けた。けれど、彼は何一つ拾ってくれずただ無言で立ち尽くす。障子の隙間から入る月明かりに照られる彼は妖しく、美しかった。怖いと思ったのに不意に見とれてしまったのが仇となる。彼は一瞬口角を上げて私の手を掴んだ。
 まさか彼から動くとは思いもせずに、私はされるがまま力に逆らえず更に部屋の奥に進むことになる。障子が彼の手によって閉じられてしまった。部屋は光の届かない暗闇に逆戻りする。
 三日月さんは私の肩をぐい、と押した。私は尻餅をつく羽目になり、痛みに目を閉じた。腰を打ち付けて息を詰めていると急に肩を押されて背が床に叩き付けられた。痛みにまたしても身動きが取れずに居ると手首を捉えられて、動きを阻止する為か三日月さんが私の腹の上に股がった。とうとう何をされてしまうのか分からなくて私はパニックに陥る。まって、なんで、何をするんですか、三日月さん。泣きそうな情けない声に答えはない。彼はまた一度だけ口角を上げて私の目を妖しい視線で射抜くと、初めて声を発した。

「頂きます」

食事のときの様に言った彼はそのあと私の唇をぱくりと貪った。
 初めてだった。男性経験のない私はどうすればいいのかわからないまま彼の手によって蹂躙され呆気なく処女を散らせた。私を気遣わない酷い抱き方だったと思う。唇を塞いで声を殺させて、体を暴いたかと思えば愛撫もそこそこに猛る性器を捩じ込んだのだ。痛みしかなかった。どうしてこんなことをするのと、泣きながら訴えてみても彼は何にも答えない上にうっそりと満足げに笑うのだ。ただただ怖かった。痛かった。こんな怖いことは夢であってくれと祈ることでしか耐えられなかった。あまりのショックで意識を手放した後も腰を熱い手で掴んで揺さぶられた。怖い、怖い助けて、…―――

 澄みきった空気に鳥の囀りが響く綺麗な朝だった。身体中にあの手の感触が残っているのに身体の痛みは何一つない。怖くなって整えられている寝着の袷を開き体を確認するけれど傷ひとつ、痕ひとつない。昨日の名残のない体をぺたぺたと触れて確認するけどいつも通り可笑しな事など何もなかった。乱暴にされた腰は痛むどころか快調で起き上がるのに何の支障もない。
 唖然と自分の体を見下ろしつつ力なく褥に座り込む。暫く理解が追いつかず、恐怖で震える体を慰める為に自分の体を抱きしめていた。深呼吸を繰り返す事暫く、漸く落ち着く事が出来て腰を上げた。
 もう一度鏡の前に立ち、服を脱いで自分の体を確認したが何一つ怪我や痕は無く





A


 その日はとても月が綺麗な夜だった。食事も入浴も済ませ、執務室に赴き、眠気が来るまで仕事をしようと文机の前に腰掛けて紙と向き合っていた。ふと障子の隙間から覗いた月があまりに綺麗でほう、と溜め息を吐いた後のそのそと這って障子を開けてみせた。庭に咲き誇る桜の上に浮かぶ月は雲ひとつない冴えた夜空に映えていて思わず息を飲む。本丸と言えど神の住まう処に違いなく、庭の桜は神秘的な程花を咲かせてその花びらを舞わせている。そしてその非現実的な程美しい景色に佇む珍しい姿に目を奪われる。
 庭の池の前に立ち、月を見上げる三日月宗近の姿があった。
 彼は天下五剣の中で最も美しいと称されるだけあり、人の姿もまた大層美しかった。そんな彼が景色に加わるだけで、どんなに美しい月も、桜もかすんで見えてしまう。私は彼に目が釘付けになってしまった。思わず溜め息が漏れてしまう程、月を見上げる彼の姿は綺麗で時も忘れ茫然と眺めていた。
そんな彼の視線がこちらに向くと、彼は微笑を湛える。夜と言う事もあり騒がしくはしないのだろう。ふと我に返り、声を掛けた。

「三日月、春と言えど花冷えで冷えています、こちらへ」

大きな声では無かったが静かな空間で彼の耳に届いたのか彼は一歩一歩こちらに近づき縁側に腰かけた。草履を脱いで私の側まで来たかと思えば部屋には入らずそっと頭を下げて見せた。臣下として主の部屋に入る前にはかしこまるらしい。普段のマイペースっぷりや上から目線な話し方は何処へやら。不意に礼儀を通されるとギャップで驚いてしまう。どうぞ、と手で室内を指し示すと彼は「失礼する」と断ってから部屋に入って来た。
 今日は特別冷え込んでいた。本来ならば春の陽気で温かい筈が桜が咲いてからは必ず一度冷え込むのだ。丁度その時期に差し掛かり、手足を冷やさない様、と近侍が火鉢を用意してくれた。そのお陰で部屋は温かい。
 三日月も外との温度差に体を震わせていた。そもそも冷え症である彼がこんな夜更けにどうして外に出ていたのか。そっと手を差し出してみると彼は首を傾げ、意図に気付くと私の手を握り返して来た。思った通り彼の手はとても冷たい。体温を分け与える様にそっと両の手で包むと彼はそっと目を閉じて私に委ねた。とても穏やかな時間が流れていた。火鉢のぱちぱちと燃える音の他に庭から聞こえる小川のせせらぎ。月が高く上り、桜が舞う外の風景を横目に瞳を閉じている彼の手を温めた。
 男の人なのに女の人の様に美しい顔をした三日月は睫毛も長く、火鉢と行燈に照らされて下りる影が美しい。肌も白くまるで陶器の様、その上頬に掛かる髪は絹の様に柔らかく艶を持っている。目蓋が上がれば月を思わせる打ちのけが浮かび妖しく瞳が細められる。だが、その美しい顔の割に体は男のそれで、鍛えられたしなやかな肉体が着物越しにでもわかる。これほどまで人工的な美を持つ彼を前に私は思わず息を飲んだ。

「…はっはっは、そんなに見つめられては穴が空いてしまうなぁ」
「…それは、失礼致しました」
「いいや、構わんよ。見惚れられるのには慣れている」
「…」

こちらが見惚れていたと自覚させられ妙な恥ずかしさが襲い口を噤む。三日月は愉快そうに目を細め、今度は私の手の平を数度握った。彼の手はしなやかなのかと思いきや、武士のそれだった。刀を握るその手には豆が出来、硬くなっている。そんなギャップにも驚きつつまた呆けていると三日月はくすりと笑った。笑われて更に恥ずかしくなり私は俯く他ない。

「して、主」
「はい」
「何をしていたんだ?」
「…ええ、私は仕事を」
「ほう。こんな夜更けに仕事とは感心だなぁ」
「…桜も、月も綺麗でしたので眺めながら、ですが」

三日月は何をしていたのですか、と尋ねてみると彼は黙り込んで薄らと笑みを浮かべた。どうかしたのだろうかと目を合わすと彼は「主」と私を呼ぶ。

「寒いなぁ」
「え、ああ…では障子を閉めましょうか」
「ああ。頼む」

彼から手を離して腰を上げ、障子を閉めてまた戻ろうとすると彼が私に手を差し伸べていた。畳の上に座る彼とその前に立つ私。手を差し出され意図が分からず取りあえずその手を握り返すと彼は優しく、そっと私の手を撫で握った。

「三日月、」

くすぐったさを咎めるように名前を呼ぶと彼は眉を下げ困った様に笑う。

「主、寒いなぁ」
「寒い、ですか」
「ああ。とても」

体温を分け与えた筈の彼の手は先程と変わらず冷たいままで私はうろたえる。どうしたものかと彼の手を両手で包むが彼は相変わらず困り顔で私を見上げている。

「主の熱を俺にくれないか」

両手を伸ばした彼は私を引き寄せ、腕の中に収めた。力に敵わずされるがまま彼に抱き締められて、気付く。陶器の様な頬も酷く冷たかった。両手で頬を包んでやると泣きそうな顔をしてそっと目を閉じた。彼の手は背から後頭部へと移動してそっと押されるとその次には唇が頬に掠る。三日月の冷たく、きめ細かい肌が唇越しに伝わった。とても気持ちがいいが、冷たさに驚いてしまう。

「あっ、み、三日月…」
「寒い…、主は温かいな」

彼は私に何をさせたいのだろう。普段のスキンシップと変わらないと思って居るんだろうか。けれど、頬が触れあう程密着し抱きしめられる事は普通じゃないと言う事を知らないのだろうか。慌てて触れてしまった唇を離し、顔を背け、彼の肩に顔を預ける。背と頭に手を回され、私は力なく肩に手を添える他ない。

「三日月、離して下さい」
「嫌か?」
「…い、嫌…です。」
「そうか」

納得はしてくれたのだろうか。そうか、という返事の割に手が離れず、私は固まる他ない。あの、三日月、そろそろ離して下さい、とお願いしても返事は無く代わりに頭を撫でられる。無性に切ない気持ちになるのは何でだろうか。普段、どんなに頑張っても頭を撫でてくれる様な間柄の人間は居ない。上司は端末越しに指示を寄越すだけで、結果を出した所で端末越しに返事が来るのみ。こうして人の手に撫でられるのは審神者になる前家族がしてくれたそれ以来だとふと思えば、撫でてくる三日月の手を拒めなかった。
頭をゆるゆる撫でる大きな手は冷たいけれど、じわじわと胸の内が温かくなって胸が苦しくなる。これ以上されれば泣いてしまいそうでやめて、と声を掛けると三日月は私の体を少し離して顔を覗いた。

「そなたの体はどこもかしこも温かいな」

綺麗な微笑はあっという間に距離が無くなって、互いの唇が重なっていた。
思った通り彼の唇は冷たい。私の体を抱きしめる腕も手の平も、指先も冷たいけれど、何故か温かい。言うなれば安心感から来る温もりだろうか。幼い頃父の膝の上に腰掛け、頭を撫でて貰ったあの感覚に近い。嫌なのに拒めず、やめてと拒む言葉の割に手は彼の狩衣に縋っていた。冷たい唇が触れる度、胸が締め付けられる。この言いしれぬ感情は何なのか、柔らかな唇に、妖しい月に魅せられて私は抵抗する気力を失った。



 翌朝、驚くほど代わり映えが無かった。昨日は確かに三日月と体を重ねた筈だと言うのに、体にはその名残一つない。冷たい唇に啄まれて付いた筈の鬱血は姿を消し、いつも通りの素肌のままだ。彼をねじ込まれた筈の秘所には痛みもなく、苦なく起き上がる事が出来た。濃密な行為の香りが充満していたはずの部屋は清廉な気で満たされていてまるで何事も無かったようで放心する。
 身支度を整え、廊下に出ると近侍が声を掛けてくる。昨日の晩、私は確かに執務室に居た筈だが、近侍が言うには早くに私室に戻ったらしい。昨日の晩見た、あの美しい景色は神秘的かつ非現実的だったがまさか夢だったとはと、記憶の食い違いに目を見開く。ならば、と私は夢に見た三日月の事を想う。夢は潜在意識の表れと言うが、私は彼に頭を撫でられ、拒めず体を重ねた。彼に対してそのような意識などした事もないのになんて破廉恥な夢を見たものかと自分のはしたなさに顔を赤く染める他ない。
 三日月の事は美しいとは思う。だが異性として意識などした事もない。その上体を重ねる様な関係なんて望んだことなどない。審神者になったお陰で男性経験がない私には想像もしえない筈だがそんな事を夢に見てしまう程私は欲求不満だったのだろうか、と俯いた際に自分の足の違和感に気付いた。下着がびっしょりと何らかの液体で濡れている感覚。昨日の今日でそれは自身が出した分泌液だと自覚し、恥ずかしさのあまり近侍の側から走り去った。夢一つでそこを濡らしてしまうはしたない主人だと気付かれたくなくて、適当な言葉を並べて逃れた。

 障子を閉めて服を着替え、気持ちの悪さに慌てて風呂に向かった。朝と言う事もあり浴室はがら空きで入っても誰かに見られる事は無いだろうと確認も取らずに入った事に後悔する事になる。広い広い浴室の向こうには石で囲われた本格的な温泉がある。湯気とその石の凹凸に隠れて私は全く気付いていなかった。シャワーの栓をひねり、体にお湯を掛けて三日月に触れられた感触を消そうと躍起になっていた。いつもより熱い湯で。肌が少し痛むくらいに擦って、そうして体を洗い終えた後、湯に浸かろうとつま先から入れば、私以外誰も居ない筈の浴室に笑い声が響く。

「おはよう、主。朝からそんなに入念に洗って、外出でもするのか」

まったりとしたその声は間違いなく昨夜に逢った三日月宗近だった。夢なのか現実なのか分からない私は気が動転し、肩まで浸かる彼を放心して見下ろす事しか出来ない。

「良い湯加減だぞ」

そう言って手招く彼を前に私は漸く状況を把握して慌てて逃げようとした。すると手を引かれ、私は逃げる事が叶わず彼の前で裸体を晒す事になってしまい、あまりの恥ずかしさに自由な片手で体を隠し、慌てて体を背け湯に浸かった。
三日月は呑気にはっはっは、と笑って私の手を離すとざばざばと波立てて湯から出ていく。

「俺はそろそろ出るとしよう。主はゆっくりすると良い。人払いしておこう」

そう言って呑気に笑顔を向けて去っていった。昨日の今日で私の心臓は破裂せんばかりに脈打っている。昨日、あの手で私は体を包まれ、撫でられたのだ。あの優しい笑みで見下ろされ、優しい声で体を求められたのだ。意識するなと言う方が無理な話で、昨日見た肌が目の前にあって思わず顔が真っ赤になってしまった。
彼の体は普段狩衣に包まれ、内番でも露出が少ない。そんな彼の陶器の様な肌を、どうして忘れられるものか。頭の中は昨日の睦事でいっぱいになり、熱いシャワーにあてられていた事もあり、肩まで数分浸かっただけで逆上せてしまった。考え事をしていたせいで完全に出る時間を見誤ってしまい、体はへとへとになっていた。脱衣所に何とか出ると平気な顔をして三日月が座っているから私は思わず悲鳴を上げて尻もちをついてしまった。

「酷いなぁ。主を気遣って迎えに来た俺にその仕打ちはなかろう」
「大丈夫です、放っておいて下さい…!」
「そう言う訳にもいかんだろう。逆上せて立てん癖に。」

歩み寄ってくる彼に警戒心剥き出しの私は這いずってでも逃げようと思ったのだけれど難なく捕まり、バスタオルに包まれてしまった。

「…っ、」
「大丈夫か。顔が真っ赤だ、逆上せてしまったのだな。水でも飲むといい」
「ありがとう、ございます」
「一人で着られるか?何なら世話してやろう」
「結構です。三日月…!セクハラですよ…!」
「なにスキンシップと言うやつだ。冷たいなぁ」

この三日月は昨日、私の部屋に訪れた彼なのだろうかと思う程いつも通りで調子が狂ってしまう。あれは本当に夢で、私は潜在意識の中で彼を求めていたのだろうか。そう思うと罪悪感でいっぱいで顔を合わせられない。彼は私の濡れた髪を大きな手で一撫でして「仕方ない。邪魔ものは出て行くとしよう」と笑って脱衣所を後にした。


***


お粗末さまでした。
こんな長い追記をお読み頂きありがとうございます。今後も精進いたします。

Jan 11, 2017 23:28
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