桜様。

手紙、読みました。わざわざ本当にありがとう。

その、確かにこうして改めて筆を取るというのは緊張するものなんだと俺も今実感してます。

陽気も暖かくなってきて、少しは体調も安定しやすくなってくると思います。

また会える日を、俺も楽しみにしています。



睦月






《桜を送る手紙》






会えない日は私がそうするように、睦月くんもまた私に手紙を認めてくれていた。少しだけ緊張を覗かせる、けれど優しく労ってくれるような、あたたかな文面を載せたその文に、私は舞い上がるほどに嬉しくなる。

一字一字を噛み締めるように大切に読み、返す言の葉もまた同じように、一字一字を大切に綴ってゆく。積もる想いを載せては募らせ、私たちの日々は緩やかに重ねられていった。


「桜があまりに畏まった文の書き方をしているから不思議に思ってたんだけど、実際自分で書いてみるとわかるな。なんかさ、変に緊張するというか......」


文を交わしあい、それから再び交わした邂逅で、そう言って照れたようにはにかんだ睦月くんのその笑顔に、私の胸の奥があたたかくなる。やさしい言の葉。やわらかな眼差し。それはまるで、春のひだまりのような......。


「でも、ことばを選んでゆっくり綴っていける分、いつもより自分の想いを確実に紡げるような気もするな」
「それは、確かに。私はあまり話すことが得意ではないから......余計にそう思うかも」
「そういえば、桜、文だと饒舌だもんな」
「そ、そうかな......」


どうしよう、もしかしてなにか良くないことでも書いてしまっただろうか......。

認めた内容を慌てて思い返そうとするけれど、焦ってしまっているせいかうまく思考が働かない。確かにふだん交わしている以上のことばを綴っていられる分、余計なことまで書いてしまっている可能性は否定できなかった。

どうしよう、どうしよう......。焦る私のこころをまるで知らず、睦月くんはただただ変わらず笑ってくれる。


「うん、ちょっとさ、嬉しいんだ。ふだん知れないような桜のこころを知れるようで」
「え......」
「少しずつでいいんだ、少しずつ、ことばでも桜の想いを伝えてもらえたらなって思う」


あなたは、本当に......。

春のひだまりのように、やさしいひと。



桜様。


日差しも落ち着き、暑さも和らいできた昨今。いかがお過ごしでしょうか。俺のように体調を崩したりしていないといいのですが......。

早速ですが、今回の本題としてひとつ、お誘いしたいことがあります。俺の体調がよくなり次第の話ですが、以前にもお話しした俺のふたごの兄と、俺たちの妹とで初秋の散策に赴く予定を立てています。よければそれに桜も参加をして欲しいと願うのですが......。

兄の樹月も、妹の千歳も、きみと共に出掛けることを楽しみにしています。

良いお返事がいただけたらと願って、今回の筆を置かせていただきます。



睦月










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