結局。
無事に見つかったのは妹の澪ちゃんの方だけ。
姉の繭ちゃんは依然見つかっていない。
何があったのか澪ちゃんはまったく語ってくれないけど、でも……。
私には、澪ちゃんの傍にぴたりと寄り添う繭ちゃんの姿が視えていた。
心配そうに澪ちゃんを見つめるその姿が視えるのは私だけ。
それが意味することは……。
繭ちゃんの、死。
澪ちゃんが病院に入院することになるまで、それほど時間はかからなかった。
三 「澪と繭」
……澪ちゃんの状態は、正直あまり良くはない。
怪我を負っているとか、そういう身体的な問題ではなく心が不安定になってしまっていて。
最初こそ見舞いに行けばぎこちなくではあるけれど、私とも会話をしてくれていたのに。
今ではずっと独り言を呟いてばかりいた。
内容は、同じことのリピート。
――お姉ちゃん、ごめんなさい。
まるで壊れたラジオのように繰り返される繭ちゃんへの謝罪は、どんな罪へ向ける贖いなのか。
わからないけど、でもそれを繭ちゃんは望んでなんていない。
繭ちゃんは、ただ澪ちゃんの傍にいることに気付いて欲しいだけみたいなのに。
澪ちゃんには、繭ちゃんの想いも私の言葉も届かなかった。
「……繭ちゃんに、会える?」
今日の面会を終えた帰り道。
近くの定食屋で螢と二人、話す内容はもちろん澪ちゃんのこと。
今日は澪ちゃんが眠っていて、私は会話ができなかったのだけれど、澪ちゃん、最近繭ちゃんの夢を見るのだと螢に伝えたらしい。
「……だからなのかもしれないが、澪、最近眠っている時間が長くなったように思うんだ」
うん……、それは私も何となく感じていた。
何となく、というくらいだから、驚くほど長く眠っているわけじゃない。
でも……何だろう、何か引っかかる。
「繭ちゃんの夢をみて、それから長くなった睡眠時間……」
……あれ、ちょっと待って、この話って……。
「ねえ、螢、螢は眠りの家の話って知ってる?」
「眠りの家? そう言えばそんな話を前に優雨から聞いたような……」
優雨、か。
うん、優雨なら知ってる話だよね。
「えっとね、母方の実家にお祓いに来たひとの話なんだけど……」
「母方の? って、ああ、神社だったよな」
「うん、そう。で、そこに家族に連れられて来た人がいて、本人は眠ってたんだけど、家族が懸命にお祓いを希望してきたの」
割と霊感がある方だからか、私も休みの日とか除霊の手伝いを頼まれることがある。
そんな中に偶然そのひとも含まれていて。
……眠っていた、という私の言葉で既に察してくれたらしい螢の表情が強張った。
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