そんな、理由もわからない確信。どうしてそう言い切れるかなんてさっぱりわからないけど、でもその自信だけは何故かまったく揺るぎそうもない。


「すごいかどうかはわかりませんけど、でも、わたしが彼らを間違えることはないと思いますよ」
「そうだね。名前が、僕たちを間違えることなんてあるはずないよ」


……え!?

び、びっくりした。いつの間に近くまで来ていたんだろう、樹月がわたしの傍に立ちにっこり微笑む。顔立ち美形なだけに、それだけで距離を置きたくなってしまう笑みだ。

なんていうか……寒気がして。

……寒気?

何故だ、と自問。けれど答えの出ないそれに、首を傾げる。そうする内にも、美也子先輩から不思議そうな声音で言葉をかけられた。


「ふたりは元から知り合いだったの?」


知り、合い……。ええ、っと。



――僕は立花樹月。よろしくね。



……あれ。
なんだ、今の。

わたしが彼に会ったのはついこの間、構内でのはずなん、だ、けど……。



――さすが名前。僕にはとても真似できないよ。



笑い、声。楽しそうな、弾むような。

それは確かに樹月の声だけれど……わたし、そんな声、いつ聞いた?


「……いえ、この間、会ったばかりですよ」


どくん、どくん。

震える、震える……。

何が? ……なにが。

首を振って振り払うのは、温度のないぬくもり。感覚すら失われているというのに、確かにわかる、この手が繋がっているという証。

彼は、わたしになんて言った? いや、そもそも彼はいったい、だれだ?

ぐにゃり、と、視界が一瞬歪んだ気がして、思わず頭を振る。そうしてちらりと見やった樹月が、本当に一瞬。刹那の瞬間だけ、何故か。

白い着物を身に纏って見えたのだ。

ぎくりとして目を瞬けば、不思議そうにわたしを見つめる美也子先輩と樹月とが視界に入る。その時には既に樹月の姿はいつものラフな洋服姿で……。

いやだな、わたし、ボケてきた?

内心で小さく苦笑してから、わたしはふたりに言葉を投げる。

いつもと、変わりないように。


「さ、纏め作業に戻りましょう。樹月も、睦月が待ってるよ」
「……そうだね」


結局、樹月はなにを言いたかったのか。なにかを伝えたそうなもどかしそうな表情を浮かべる彼の姿に気付かなかったふりをして、わたしは作業へと戻っていった。











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