救出作戦始動



何もこのタイミングで、と思わず悪態を吐きそうになるがそれを耐え。シャドウへの注意は怠らずに、突如現れた闖入者を確認する。

それは寮で匿っているはずの、この事態を招いた元凶の一人、森山だった。


「まさか……森山さん!? 逃げてっ!! ここは危ないからっ!!」
「わ……私、あ、あんたに、謝らなきゃって……」


状況が見えていないのか。
山岸の姿だけを認めた森山が、山岸の切迫した制止も聞かずに覚束ない足取りで山岸の元へと歩き出す。

そんな彼女がこの場で一番の弱点と成りうる存在だと気付いたのか。シャドウ達の狙いが、森山に定められた。


「森山さんッ! 私が……守らなきゃ!」


球体のような体型をした女性型のシャドウが、手にしていたステッキらしき棒状の物を振り翳す。物理的な攻撃が届く距離ではないことから、おそらく魔法を放とうとしているのだろうと思われた。

それに気付いた山岸が森山の身の危険を察知し……無意識にだろうか、真田に渡されていた召喚器の銃口を、自ら自身の頭部へと向け引き金を引く。

空間が爆ぜ、山岸を包み込むような姿でそこに現れたのは。



――ペルソナ。



「山岸さん……!?」
「私……見える……。私……あの怪物たちの弱い所……なんとなくだけど、見えます……」


目の前で起きた状況に岳羽が目を見開く中、この場の全員の視線を一身に集めた山岸が、真っ直ぐにシャドウを見据えてそう告げる。

どうやら真田の考えは正解だったらしい。
彼女は後方支援型のペルソナ使いのようだ。

それも、桐条の上をいく。

まあ桐条のペルソナは元々攻撃タイプだと聞いていたから、支援能力が低いことは致し方ない。むしろその能力すらも保持していたこと自体が既に驚嘆すべきことなのだ。

と、それはともかく。
唐突に発動された山岸のペルソナに驚いて、かは不明だが、シャドウが攻撃体勢を解いてくれた今が好機。


「こいつらは俺たちで片付ける!!」


桐条と岳羽はまだ戦闘に参加できる状態にない。
そのため、能力に目覚めて早々で悪いが、山岸にバックアップを頼み、戦闘に移れる状況にある男性陣がシャドウの前へと進み出た。


「イル、桐条先輩と岳羽を頼む」
「え、で、でも……」
「大丈夫だから。俺たちなら絶対に負けない。だからイル、頼む」


シャドウを見据えて。背中越しにきっぱりと告げる梓董の言葉は強く。


「……わかった。頑張ってね」


待機組で唯一まともに動けそうなイルは、そのまま後方待機で桐条と岳羽の支援についた。

大丈夫、と、負けない、を強く伝えた梓董を信じて。

その信頼が伝わったからこそ、梓董はそれに応えるため……自身の言葉を確かなものにするため、召喚器に手をかける。


「敵シャドウ、皇帝タイプと女帝タイプです。皇帝タイプは魔法、女帝タイプは物理が弱点ですよ!」
「了解。伊織と真田先輩は女帝タイプを攻撃。俺は皇帝タイプを攻撃する。……一気に片を付けるぞ」


山岸からのアナライズ結果を耳に下される、梓董による簡潔な指示。それは真田と伊織にしても同じ意見で。

三人は、シャドウへと攻撃を開始した。









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