救出作戦始動



ここ最近校内を騒がせていた一連の原因は、十日ほど前に森山夏紀という女生徒を主としたグループが、山岸風花を軽い気持ちで体育倉庫に閉じ込めたことに端を発していたらしい。彼女らが自身らの犯してしまった過ちをきちんと省みた時には時既に遅く。
先んじて夜中に山岸の様子を見に向かった女生徒の一人は翌朝校門前に倒れていたところを発見され、当の山岸は体育倉庫から姿を消してしまっていたらしい。

その後も幾度か森山の仲間が山岸を探しに校舎に侵入したということだが、そのことごとくが最初の女生徒と同じ道を辿り。
岳羽の集めた情報通りの結果となったわけだ。

とにかくそうして発見された女生徒達に何か前触れのような異変がなかったかと尋ねれば、森山は思い出したように口を開いた。



――声を聞いたと、言っていたと。



校門前で発見された女生徒達は、いずれも皆それよりも先に妙な声を聞いていたらしい。

何かに呼ばれるような、そんな声を。

それが何の声かは確信に欠くが、とにかく、森山には念のためその声に用心するようにとだけ告げ、今夜は皆の暮らす寮に泊まるよう桐条が勧めた。

あの寮は本来一般人にはあまり立ち入りを許してはいないのだが、今回は状況が状況なのだから仕方がないだろう。

そちらはそれで一端終止符を打ち、山岸の探索については放課後生徒会室にて作戦を練ることが決定した。










《6/08 救出作戦始動》










山岸捜索兼救出の作戦内容はこうだ。

今夜、学園への潜入を遂行し、山岸と同じ状況下でタルタロスへと潜り込む。

山岸はおそらくタルタロスの中に閉じ込められたのだろうというのが、先輩方の見解で。真田の予想では、彼女はずっと影時間に居続けているのではないかとのこと。

それが本当に可能か否かは不明だが、何せ元より謎の多いタルタロス。何が起きても不思議ではない。

もしも真田の予想通り、山岸がこの十日間ずっと影時間にのみ存在していたのなら、時間的な意味合いでは彼女の生存に危機はないだろう。何せ実際に過ぎ去る時間には一切触れず、影時間だけを繋ぎ合わせて存在しているということになるのだから。

とは言え、タルタロスの中は普通に立っているだけでも体力の消費量が馬鹿にならない。そんな中に長時間居続けているともなると、時は一刻を争うことに変わりはなく。
その上シャドウという人間の精神を喰らう敵も存在するのだ。とにかく急ぐに越したことはないだろう。

そう決まったところで問題が一つ。

それは、彼女が通常の踏み入り方でタルタロスの中に侵入したわけではないということ。

それがおそらく、山岸が失踪している期間も皆で何度かタルタロスを探索をしたが、彼女を見かけることのなかった理由。
多分、普段探索しているような場所とは違う場所に閉じ込められてしまったのだろう。もしそうであるなら常の探索通りにタルタロスに潜り込んでも成果は変わらない。
ならば、同じ方法でタルタロス内へ侵入すれば、山岸と同じエリアに行ける可能性が上がるのではないか。

リスクとして、そんな強引なやり方をすれば、最悪二重遭難を引き起こしかねないらしいのだが。

助けられるかもしれない方法があるのに、試してみないわけにもいかない。
それに関し、必要以上に真田が意気込んでいたように思えたが、どちらにせよこれで山岸探索の作戦内容は決定し。

決行するために、深夜、皆は月光館学園内部へと潜入することになった。




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