若干一名初対面



「……は? 溜まり場?」


昨夜。報告会などすっかり忘れ去っていたイルが不在の中、それは予定通り行われ。岳羽の調査結果からオンリョウ不在説が濃厚になり、代わって現れた真実を探るべく、潜入捜査をしようということになったのだ。


「そう。そこが、被害者三人がよく夜明かししてた場所なんだって。調べてみる価値あるでしょ?」
「……いや、でもさすがに危ないんじゃ」
「大丈夫だって! 梓董君と順平も行くし、今度は一緒に行くんだからね、イル!」


オンリョウ不在に落ち着いたことに安堵してか、それをより確固たるものにして安心したいからか、この上なく意気込む岳羽に、渋るイル。
何とか止めようと試みるイルだったが、岳羽は全く聞きもせずに話を勝手に進め、結局今夜の溜まり場への潜入捜査にイルも参加することとなった。










《6/06 若干一名初対面》










夜だから、という理由だけではなさそうな暗さを誇る路地裏に。集まるその人種は限られているだろうというその考えは、予想を裏切らずに正解で。
言葉は悪いが、柄の悪い人達がここを溜まり場として集まっている。

そんな場所にやって来た、このような雰囲気とは無縁そうな四人組。彼らの中で乗り気を見せるのはたった一人だけではあるのだが、その一人の気迫は凄まじく、他三人は嫌でも付き合わされる羽目となった被害者だ。

中でもイルはあからさまな不機嫌さを隠そうともせず。その理由は、梓董をここに連れてくることを強く反対したにも関わらず、岳羽に強制連行されたことにある。
自分は仕方ないにしても、梓董を巻き込むことは許せない、というのがイルの意見だったようだ。

梓董としてもこんな場所になど来たくはなかったため、来なくて済むならそうしたかった、が。
やはりどこまでも梓董のことばかりを考えているらしいイルに、どこか苛立ちのようなものを覚え、ここまで来る意思表示をしてしまったのだ。

……大体、このような場所、梓董よりもイルの方が来るべきではないだろうに。
そう思ったら、余計に苛立ちが増し、しかしその理由がわからない梓董はその感情を胸中に押し込めた。

とにかく。さっさと目的を果たしてさっさと帰ろうという思いは、梓董もイルも共通していて。情報収集をするために手頃な相手を捜そうとしたところ、四人の男女がこちらに気付き近付いてきた。


「ちっと、オマエらさ。遊ぶとこ間違えてんじゃねえの?」


男女の内の男の一人が不機嫌そうに眉根を寄せてそう声をかけてくる。
まあどう見てもこの場所にはこちらの方が不似合いなのだから、彼の言い分はわからなくもない。
実際、遊ぶ云々は別にしても、帰れるものならとっくに帰っているところだ。こんな風に絡まれることは想定内だったが、現実にそうなると面倒なことこの上ない。

あからさまに面倒そうに視線を男女から逸らして溜息を吐く梓董やイルとは違い、男の柄の悪さに後込んだらしい伊織が困った様子で視線を迷わす。


「あ……いや、別に……」
「フゥ……オマエらみたいの来っとシラけんだろ……帰れよ、ヒゲ男くん」




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