平均年齢降下中



ここ最近、天田が何やら深く考え込んでいたことは知っていた。知ってはいたが……。

まさか天田までもがこの戦いに身を置くなどと、誰も思いはしなかったのだ。







《08/28 平均年齢降下中》







主に映画祭とか映画祭とか映画祭とかのお蔭で、開始早々ここ最近回数がまばらになっていた賄い屋さん。今日は営業できたそれで全員揃っての夕食を済ませた後、幾月から話があると召集をかけられた作戦室。そこに招かれたのは、今までそこに入ったことのなかった天田少年だった。

驚く皆と、どこか焦っているようにも見えた桐条と真田をそのままに、幾月と天田本人から告げられたそれは、天田の適性が発覚したということ。まだ幼い彼に命をかけろだなどとそんな酷なこと、と、皆が思う中、何やらそれとは別にもわけありそうな桐条と真田が彼のS.E.E.S参入を渋ったが、どうにも当の本人の意志が固いらしい。自分から申し出たと食い下がる彼に圧されるように、結果として天田の参入が果たされた。

彼曰く、何故自分に力が目覚めたかようやくわかった、とのこと。

彼の年齢には不釣り合いとも思えるほどの強い何かを宿したその呟きは、けれどどこに向けられたものかは判然とされず。心配を色濃く宿す皆を置いて、その場はそれで解散となった。


「……天田くん、ちょっと心配だね……」


手元で軽い金属音と弾ける水音を響かせながら、山岸が小さく呟く。解散後に夕食の片付けに取り組むことにした山岸と岳羽、そしてイル。それぞれイルが皿を洗い、山岸が洗剤を流し、岳羽がそれを布巾で拭いてゆくといった役割分担をこなしていた。そんな中での山岸の呟きに、動かす手だけは止めず岳羽が小さく息をもらす。


「まあ、ね……。わたし達だってまだ若いけど、でも天田くんなんてまだ小学生だよ? そんな子が命かけて戦うなんて……」
「そうだよね……。そうまでする理由って、一体何なんだろう……」


年端もいかないような少年が、まだまだ歩みの少ないその人生で、命をかけるほどの何を一体体験してきたのか。何かを強く宿した眼差しを思い返すと、他人が口を挟んでいい決意には到底思えなくなるが、だからといって心配がなくなるわけでは決してない。自分達とてたかだか十数年分しか生を刻んできていないのに、天田はその小さな背にどれだけのものを背負ってここに立ったのか。

彼の心情と現状を想えば想うほどに重くなる空気に、ぽつり、イルの呟きが乗せられた。


「命をかける、ってさ、生半可なことじゃないよね。それだけ大事なものがあって、それだけ譲れないものがあるってことでしょ? ……でも、死ぬつもりなわけじゃない。その大事なものを、譲れないものを、守り抜きたいだけなんだ……と、思う。だから、だからさ、あたし達にできることは」


止めることは、否定すること。命を想うことは尊く大事だけれど、意志を消して抑えつけて、それで何が守れるのか。もちろん、ただ無闇に命をかけてそしてその灯火を消してでもしてしまったら元も子もない。

だから。だからこそ。




「信じて、一緒に歩むことなんじゃないかな」




何のための仲間か。フォローし、支え合うことができずして隣を、背を、守り合うことなどできはしない。

それを知っているからこそ、岳羽も山岸もイルの言葉に表情を緩める。


「……そうだね。うん、天田くんが何を抱えてるかわかんないけど、一人で頑張りすぎないようわたし達が支えればいいんだよね!」
「私も、全力でサポートします」


言い切り、改まった決意に顔を見合わせ頷き合う岳羽と山岸。今ここに流れる空気が、きっと大丈夫、と、そう背中を押してくれているように思えた。


「えっと、そのためにもまずはお料理、頑張らないと……」


腹が減っては何とやら。まずは活動の源でもある食事をしっかりとれるよう、そこでのサポートも頑張らないと。

そう意気込む山岸に、今度は岳羽とイルが顔を見合わせ笑みを交わし合うのだった。








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