再逢
「っ、はあぁぁぁ〜……。な、何とか倒せたね……」
この階層の番人らしきシャドウを倒し。とりあえず一息つけたところでアイテムの回収を行う。
それが終わったところで、共に探索していた岳羽と伊織を呼び、先に続く階段を上った。
《4/26 再逢》
「つかおまえ、マジ体力あるよな……」
「本当。あんなに強いシャドウ倒した後だっていうのに、さくさく進んじゃうし」
更に次の階への階段を上る途中、伊織と岳羽に続けて言われ、ちらりと後方に続く二人へ振り向く。けれど梓董の視線はまるで「どうでもいい」ことだとばかりに、すぐに前方へと戻された。
「……敵、少なくなったし」
番人が倒れ一段落したのか、今までやたらとわいて出てきていたシャドウ達が、この辺りの階だけ少なくなっている。だからあっさりと進めるのだと答えた梓董は、階段を上りきろうというところでぴたりと足を止めた。
視線は正面、ただ真っ直ぐに注がれたまま、そこに止まっている。
「……梓董君? どうしたの?」
『!? 何だ、この反応……。おい、そこに何がいる!?』
不思議そうに問う岳羽の声に重なるように、ナビを勤める桐条から慌てたような声音が届く。
何って、と、戸惑いを覚えたらしい岳羽が、恐る恐る梓董の視線を追い、そして目を見開いた。
「あの子!?」
「へ? 何々? って、女の子!?」
後から顔を出した伊織も二人の視線を追い驚愕の声を上げる。
そう、彼らの目の前……閉ざされた階段の前に、あの白いパーカーを着た少女が立っていたのだ。
相変わらずパーカーのフードをかぶっているため顔は見えないが、彼女はその場からこちらへとゆっくりと言葉を投げてきた。
「大変だったでしょ? お疲れ様」
それは心からの労いの意。
全く邪気のない真っ直ぐなその言葉に、伊織などはどうも、などと気の抜けた返事を返している。が、岳羽は彼ほど単純にはいかないようで、警戒心も露に彼女をきつく睨みつけた。
「あなた……誰? なんでこんなところにいるの?」
もっともなその問いを受けた少女は、僅かに悩むような素振りを見せ……そして。
ゆっくりと、近付いてきた。
皆の元へ、というよりも、明らかに梓董の元へ。
「あたしの、名前……」
呟くようにそう紡ぎ。
ぱさりと、払われたそのフード。
そこから露にされたのは、肩口まで伸びた透き通るような白銀の髪。
そして。
大きな、アオイ瞳が、梓董を正面から見据えるように見つめた。
「あたしは、イル。キミの傍にいるために、存在するモノ」
凛とした、それでいて優しく柔らかなその声は。
問題発言という爆弾を投下して、にっこりと緩やかに微笑んだ。
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