出して、出して!
こんな場所、いたくなんかない。
こんな村になんて、生まれてきたくなんかなかった!
私は何のために生まれてきたというの。
自由なんて一切なく、好きでもない男の子供を生まされて。
その挙げ句がこの仕打ちだなんて。
酷い。
酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷いひどい。
これではまるで、まるで私は本当に……。
殺されるために生まれてきたようなものじゃない。
出して、出して。
私は、巫女になんてなりたくない。
化け物と謗られても構わないから。
私は。
私はまだ……。
生きたいの。
第十二幕 「救出」
夢なのか、現実なのか。
それは誰の想いなのか……わたしの想いなのか。
閉じ込める目的で嵌められているだろう鉄格子に必死で縋りつき、泣き崩れる青い髪の女性の姿。
あれは、誰?
必死に、ただ生きたい……普通に、生きていたいだけなのだと願うあのひとは……。
あのひとは、私?
ぼんやりとたゆたう思考の中で、纏まらずに散らばる感覚を拾い集められずにいると。
ふいに、目の前の景色が変わった。
ただひたすらに自分の生を望み涙していた女性の姿が消え、今度はこの牢のような部屋の中で凛と座し背筋を伸ばす女性の姿が現れる。
先程までいた女性とこの女性との共通点は、青い髪。
――どうか、どうか、元気で幸せに。
ふわり。
辺りに満ちていた悲しみと怒りの空気が一変、優しく柔らかく包み込むような温もりが広がり浸透してゆく。
あたたかくて、むねがしめつけられるほどに、せつなくなるような……おもい。
――あなたたちの幸せが、母の願いです。どうか無事で、幸せに……。弥生、茨羅。
……弥生……? ……茨羅?
それは、誰?
あなたは、誰?
わたしは……。
ぼんやりとしていた私の傍に、いつの間にかその女性が近付いてきていた。
女性はゆっくりと手を伸ばし、その手で私の頬に触れる。
どうしてだろう。
こんなに近くにいるのに、女性の顔が……わからない。
――茨羅、お願い。あなたは背負わないで。ここから逃げて、幸せに生きて。
茨羅って誰?
私のことなの?
じゃああなたは……。
あなたは、いったい……。
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