木や草に隠された小さな細道を行き、階段を上る。

この暗闇だ、知っている奴じゃなければこんなところには来れねえだろうなと、胸の内でそう思った。

その階段を上りきったところで一軒の家屋が見えてくる。

そこが俺の目的地なわけだが、表から入るような愚行はしない。

……こんなところで死ぬわけにはいかないからな。

というわけで、さっさと裏に回る。

で、そこの壁に開いた穴から中に入った。












第八幕 「帰宅」












勝手知ったる……ってのは当たり前だ。

何せここは俺と茨羅の家だしな。

茨羅には秘密だが、実は俺は何度かこの家に帰ってきていたりする。

理由はもちろんこの村の状況をどうにかするため。

当然それは村のためなんかじゃまったくないわけだが、とにかく残念ながら未だにどうにもできていない。

……どころか、情けないことに何をすればいいかもわかってねえんだよなあ……。

とっとと解決できてれば、茨羅がこんなとこに来ることもなかったはずなのに。

吐きたくなる溜息を耐えて、とりあえず進む。

ちなみにあの壊れた壁の穴は、前に俺が壊したものだ。

……毎度正面から入ったら、絶対にその内殺されるからな。

自分の家で生死をかけた鬼遊びをするなんて、本当笑えねえ。

とにかくさっさと目的を果たして茨羅のとこに行かねえと。

深紅が傍にいれば、まあ大体大丈夫だとは思うが。

そう考えながら、俺は足早にある一室へと踏み入る。

迷いなく踏み込んだそこは両親と茨羅の部屋だった。

余談だが、俺はある程度育っていたから、別に部屋があったりする。

まあそれはいいとして、俺は部屋の隅にある母の鏡台まで向かい、その引き出しを引く。

そこには三枚の母の手記……。

というよりも日記の方が近いか。

それと、父が書き遺した俺たちに宛てた文、それと父が描いたこの村の地図が入っていた。

父が遺したに書かれているのは、この村の長である巴多家の鍵の在処。

俺と茨羅だけならば鍵などなくとも中に入ることができるが、二人で中に入るのは危険だ。

……かなり不本意だが、あそこに行くなら樹月も連れて行くべきだろう。

あんなところ、行かなくて済むことが一番なんだがな。

もし俺が鍵を回収するより先にみんなと合流したら、そうも言ってられねえだろうし……。

とにかく、父が書いたそれによると、巴多の鍵は墓地にある祠の中に隠してあるらしい。

……母を救うため、父が奪っておいたものだ。

使うことがないよう願いながらもそれを遺してくれた父の想いは計り知れないが、とにかくまずはそれを取りに行く。







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