「……化け物……。酷い扱いですよね……」
ぽつりと呟く深紅さんの言葉からは憤りが滲んでいた。
その思いは、僕も同じ。
この村に来る前に調べた記述によると、この村で化け物とされる存在は……。
青い髪と目の持ち主。
それは……茨羅と同じ……。
――彼女は化け物なんかじゃないのに。
皆神村での茨羅に対する周囲の態度が思い返され、不快感と悔しさ、憤りがわく。
同時に、早く彼女に会いたいという焦燥が再び気をはやらせたため、それをどうにか抑えようと息を吐いた。
「……それにしても、この鍵は一体どこの鍵でしょう?」
僕に気を遣ってくれたのか、深紅さんが話題を変えて話しかけてくれる。
その気遣いに応えるためにも、僕も気持ちを切り替えなければいけない。
……焦っても茨羅に会えるわけではないと……わかっているのに。
「この九内家当主が書いたと思われるメモには、この鍵については書いていないようです」
「……え、と。それじゃあ、一応その鍵は持っていきましょうか。どこで必要になるかわかりませんし」
「そうですね」
深紅さんの言葉に頷き、鍵を失くさないようにポケットにしまう。
九内家当主の残した
メモは必要もないから置いていくことにした。
「これからどうしましょう? 奥に進んでみますか?」
窺うように問う深紅さんに、僕は少し悩んで頷く。
「そうですね。何か手がかりがあればいいんですが……」
少しでも多くを知っておかないと。
いや、違う。
僕はきっと、知らないといけないんだ。
――茨羅。
君と、生きるために。
第四幕・了
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