…………。



………………。



………………あれ。




「あ、あの、私……村の構造とか、わからない……です、けど」




おずおずと私が言葉を紡げば、みんなからはっとしたような視線を向けられ。

直後に深紅さんが小さく……そして低めに呟いた。


「……弥生っ、地図くらい作っておいてくださいっ」


……ご、ごめんなさい。

内心での私の謝罪に気付いてというわけではなさそうだけど、深紅さんは一度小さく息を吐く。


「とりあえず、村を回ってみますか?」
「あ、は、はい」


問われて私はすぐに頷いた。

……この村のこと、ちゃんと知らないと。

そう強く思い、射影機を抱える手に僅かに力を増したその瞬間。



――ぞくり。



背筋に走った、悪寒。

まるで導かれるように背後を振り向けば、厚い雲に空を覆われ暗く闇を落とすこの場に、ひとりの女性の姿がぼんやりと青白く浮かび上がっていた。




「っ!」




その唐突な現れに、思わず息をのむ。

長く伸びた青い髪のせいで顔がよく見えないけれど……。





……青い、髪?





その髪色に戸惑う私の目の前で、女性の唇が僅かに開かれる。

その瞬間。



ごぷり――と。



嫌な水音を立てて、そこから大量の赤い液体が吐き出された。




「っ!」




ひゅーっと、空気の漏れるような音と、留まることなくごぽごぽと立ち続ける水音。

いつの間にか女性の首に直線的な線が引かれ、そこからも赤い液体が大量に……次から次へと流れ出していた。

その体は既に、鮮明なまでの赤に支配されている。

目の前の光景に目を見開いて固まる私に、女性の右手が静かに伸ばされ……。




「逃げよう!」




その手が私に触れる直前、私は誰かに強く腕を引かれ、その場から逃げ出した。















第二幕・了



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