巴多家当主の日記

《入手:第十四幕。巴多家。弥生》


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かつて。

蛟龍の巫女と為るべき娘は村の者より選び出されていたといふ事実がこの巴多家にのみ残されている。

それはある時この村に一人の異形の娘が迷い込んできたことで代替を得ることとなつたやうだ。

この異形の娘を贄とする。

かつての巴多が下した判断に異を唱へる村人は当然の如くいなかつた。
幸い、その娘はその身の異形さ故に外の地でも受け入れられずにいたといふ。僅かばかり上辺で取り繕つてやれば、容易く村を気に入らせることが叶つたやうだ。
村に住処を与へてやれば、喜び、感謝さへもしたらしい。
巫女となるその時も告げられた偽りを疑いもせず受け入れ、村の力になれるならばと告げたとのこと。

自らが死することとなるとも知らず、哀れなものだ。

それから先はその娘の血筋を継ぐ者を幽閉し、代々巫女と為してきたわけだが……。

何故か今この時になつて、次代の巫女が消失してしまつた。

村の内部だけではなく付近の捜索も成したが成果は得られず。
刻だけは過ぎ、ついにあの場から……。



障気が漏れ始めた。



刻は一刻を争う。

村の者達が察するより早く処置を行はねば。

そのために村の娘を呼び寄せ巫女となしたといふのに。





何故だ。

何故、障気が止まらぬ。





このままでは……このままでは村が、この村が滅びてしまう。



村が……。





嗚呼。





これは呪いなのか。







――御導の、呪いだ。











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