――数十年後。



誰からも忘れ去られ、地図からも消えた闇に飲まれたその村に、ひとりの少女が足を踏み入れた。




「……ここが、水治村……」




暗闇を見据える、日本人としては珍しい青い瞳は、不安と……決意にも似た強い光を宿し。

重々しく禍々しい空気に満ちた、死の臭いの濃いこの場所には、少女の生に満ちたその眼差しは……いや、その存在自体が、とても異質に思える。

しかし少女はそれを意に介した様子も見せず。

淀みなく、一歩、足を踏み出した。




「いかないと」




闇の中に飲み込まれるように消えてゆく少女の小さなその背を、留めるものは何もなかった。







《――正しくないなら、終わりはない。

くりかえす、くりかえす――》





終ノ裏・弐・了



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