声が震えないよう、必死に抑えて紡ぐ言葉。
勝手をしている私の言葉を、それでも聞いてくれようとしてくれるらしい兄の声が、ぴたりと止まる。
察して、くれたのかもしれない。
「澪ちゃん、私と友達になってくれてありがとう。澪ちゃんの優しさ、本当に嬉しかった。私……澪ちゃんと友達になれて、本当に良かった」
「茨羅、ちゃん……。やだ……嫌だよ、そんな……そんなお別れみたいな言葉……。帰ったら、一緒にやりたいことだって、たくさんたくさんあるのに……っ! ねえ、茨羅ちゃん!」
ありがとう、澪ちゃん。
ごめんね、私のせいで泣かせてしまって。
扉に両手をついて、その手をぎゅっと握りしめる。
震える澪ちゃんの声につられるようにこみ上げてくる涙を必死に堪え、押し留めた。
もう、決めたから。
「樹月、私は何度あなたに救われたかわからない。あなたがいてくれたから、私はずっとずっと笑ってこれた」
「茨羅……」
一緒に笑って、泣いて。
楽しくて、嬉しくて、暖かくて。
いっぱいいっぱい、いろいろなものをもらった。
あなたと過ごした時間はとても、鮮やかだったよ。
あなたがいなかったら、私はきっとこんなにも幸せでいられなかったと思うんだ。
「兄さんへとは違う、こんなにも大切で苦しいほどの愛おしいって気持ち、教えてくれてありがとう」
「茨羅、僕は……っ。僕は、君がいないと生きられない……っ。一緒に生きるって、約束しただろう?」
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