灯火



し……死ぬかと思った……っ。



本当に、樹月と螢さんが腕を取ってくれなかったら、私は死んでいたと思う。

運動が得意じゃないことがこんなところで徒になるなんて……。

……もう、屋根を飛び移るなんてことがないといいな……。

そう切実に願いながら、私は二人と一緒になんとか入り込めた社の中を下へ下へと下りていく。

途中、梁の上を歩いたりもして……もう本当に本気で泣きそうになったけど。

どうにか無事に一階まで辿り着くことができた。

ああ、本当によく生きてたよね、私……。


「蛇目って何でしょう?」


落ち着くために少しだけ時間をもらい、それから調べて回った社の中には祭壇らしきものがあって。

そこには何かを納めるための場所が設えられていた。

その近くに書かれていた文字によると、どうやらそこに必要なものは蛇目と呼ばれるものらしい。

手元にはそれらしい物がないから、私たちはそれを探すために一度社を出ようとしたんだけど……。


「うわっ! 出たっ!」


螢さんの言葉が示す通り、私たちの目の前に二人の女性の霊が現れた。


「すみません、少しお借りします」


樹月が素早く螢さんの手から射影機を借り受け、近付いてきた女性の霊を写す。

彼女がそれに怯んだ隙を逃さず、今度は私が写しとった。


「さすがだね、茨羅」
「樹月も」


消えいく女性の霊の姿を見送りながらそう言葉を交わすと、同じようにもうひとりの女性も写しとる。

二人の怨霊がこの場から消えたその瞬間。



私は確かに、体中に強い痛みがはしるのを感じていた。












拾参・紅・了



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