再会への路
そう告げれば、螢はますます慌てだした。
「ま、待ってくれ、弥生! 俺が茨羅ちゃんを連れてそっちに行く」
優雨にちゃんと別れを告げたいのだと。
そう言われてしまえば断ることもできない。
真冬に続き優雨まで失った辛さは、俺にもわかるからな。
……ったく、螢ごときに絆されてやる日がくるなんて、欠片も想像していなかった。
とりあえずその内容を怜に話すと、彼女はすぐに了承してくれる。
そんな彼女に悪いな、と一言残し、それから改めて螢にしっかりと釘を差した。
「言っておくが、くれぐれも俺の可愛い妹の身を預かっているという自覚を忘れるなよ?」
「わ、わかった……」
……声がひきつってるぞ。
大丈夫なんだろうな?
茨羅に何かあってみろ、お前の命なんぞじゃ贖えねえから肝に銘じとけよ。
「それじゃあ、言い伝えとか調べ直して改めて情報を纏めたら、すぐにそっちに行く」
「ああ。……と、ちょっと待て」
「……え?」
間の抜けた螢の声を放置して、俺はゆっくりと息を吸う。
そして思い切り吐き捨てた。
「勝手に出ろっ!」
言い終えると同時に受話器を置く。
たぶん螢には聞こえていなかっただろうから、俺の言葉の意味はわかっていないだろう。
だがもちろん、螢のことなんざどうでもいい。
俺は深紅を呼んできて深紅に言わせるべきだったかなどと思いながら、小さく息を吐いていた。
拾壱・了
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