ク
「茨羅!」
「お姉ちゃん!」
「睦月っ、千歳ちゃん!」
樹月に連れてきてもらった立花家で、私は凄く凄く嬉しい再会を果たせた。
ク・マタ、トモニ
「え? 私……また一緒に暮らしていいの?」
「うん」
本当に……。
本当に、また樹月たちと暮らせるんだ……!
「両親も、ちゃんと説得済みだから」
え、えーっと……。
その……さすが樹月、だね。
にっこりと笑顔を浮かべてさらりと告げる樹月の言葉は、そのあっさりさとは違い、たぶんすごく大変なことだっただろうと思う。
樹月にはいつも感謝してもしたりないほどいろいろなことをしてもらっていると、改めて実感した。
それにしても、本当に。
「凄く、嬉しい……っ」
また一緒に、日々を過ごしていけるなんて。
嬉しくて嬉しくて……っ!
言葉に尽くせないほど私が感激していると、突然樹月に強く抱き締められた。
「え、いつ……っ」
「僕も……茨羅とまた生きていけることが、凄く嬉しい」
樹月……。
何だか胸がきゅっと締め付けられるような苦しくても暖かなそんな感覚を覚えて、私を抱き締める彼の背に腕を回そうとする、けれど。
その直前。
私の足元に、千歳ちゃんが抱き付いてきた。
「ちとせもっ! お姉ちゃんにあえて、うれしい!」
私を見上げて真剣に見つめてくる大きな黒瞳が愛しくて。
久しぶりのこの感覚に、思わず泣いてしまいそうになる。
「千歳ちゃん……ありがとう」
樹月の背中に回そうとした手を引き戻し、千歳ちゃんの頭の方へと移動して柔らかな黒髪の上からゆっくりと優しく撫でてゆく。
そんな私たちの姿を、睦月は苦笑を浮かべて見守っていた。
「茨羅、もてもてだな。この場合、俺も抱き付くべきか?」
「え?」
「……睦月?」
睦月の言葉にきょとんとする私から離れて、樹月が満面の笑みを睦月に向ける。
……睦月の顔色が、何故かみるみる蒼白になっていっているけど、いいの?
「じょ、冗談だって。とにかく、またよろしくな、茨羅」
「うんっ!」
……また、よろしくね、みんな。
ク・了
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