ハチ
通りがかりのひとに話を聞いてみたけれど、詳しいことまでは知らないと言われ。
ダム……の話とか、そういうことだけ聞かせてもらい。
私は、そのひとに紹介された図書館へとやって来た。
ハチ・ツグナイ
……こんなことなら、もっとちゃんと字を習っておけば良かった……。
本を数冊借りてみたのはいいけど、難しい漢字が全然読めない。
兄や樹月たちに簡単な漢字なら教わったけれど、私自身があまり好んで本を読んだりしなかったから、熱心に勉強していなかった。
まさかそれを後悔する日がくるなんて、あの時には思いもしなかったもの。
……とりあえず、読めるところだけでも読もう。
そう決めて、しばらく読書に耽ってみる。
そうして見つけたとある本に、皆神村は祭の際に生じた闇に村全体がのみこまれてしまったのだと書かれているのを見つけることができた。
でも、樹月たちや兄のことにはまったく触れていなかったから。
……みんながどうなってしまったのか、まるでわからない。
私がいなくなった後、あの村でいったい何が起きたのかだって全然わからなくて……。
でも……。
あの村は、その時の祭の夜を繰り返していると。
続きにはそう、書かれてあった。
「……紅贄、祭……」
闇を吹き出した場所は、恐らくほぼ間違いなく×。
祭とは……あの儀式のこと、なのだろう。
「……樹月、睦月……兄さん……」
二人の儀式は……あの村に残った兄は、どうなったの……?
「……行かなくちゃ」
皆神村に。
とにかく、行かないと……。
私には、真実を知って……償う義務があるはずだから。
ハチ・了
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