シュウ
「邪魔するなら、叩き斬るッ!」
声を張り上げ、抜き身の刀を構えて前を見据える。
黒澤家の門を通ってすぐの庭。
そこで俺は……多くの村人たちに、囲まれていた。
シュウ・オヨバヌ、チカラ
黒澤家についた俺を、この家の当主は玄関先で出迎え。
そこで俺は当主と祭について話したが、やはりあいつに俺の話が通じることはなく。
八重と紗重のことを口にすれば、それにだけは僅ばかり反応を示したが。
そこを深く突いてやっても、得られる結果は同じだった。
長年続いた、村を護るためのその儀式。
それを今更止めるわけにはいかないのだと。
俺には到底納得できない理由を突き付けてくる。
結局、力ずくで止めるしか方法はねえってことか。
そう思い、俺は目の前にいる当主に刀の切っ先を向けた。
……が、当然それを他の奴らが黙って見過ごすはずもなく。
そいつらを相手に屋敷内で少し暴れた後、俺は立ち回るための足場を確保するために、とりあえず庭へと飛び出した。
だが、そこには既に他の村人たちが、各々武器を構えて大人数で待ち構えていて。
「……ちっ。ずっと後をつけてきてた連中か……」
立花家からここへ来るまでの道中、数人につけられている気配を感じてはいた。
奴らの目的はもちろん、俺を楔にすること。
気が早いとは思うが、数少ない客人を逃すまいと必死なんだろう。
……捕まってやる気は、更々ないが。
「捕まえろ。多少傷が付いても構わぬ」
ざけろよ、当主。
誰がそう簡単に捕まってやるか。
当主の声に応じるように、勇ましく俺へと向かって来やがった男の一人が、手にしていた鍬を掲げ襲いかかってくる。
俺はそれを半身逸らして避けると、男の横手から胴を深々と薙いだ。
赤く爆ぜた血飛沫を身に浴びながら、俺はすぐ傍まで肉迫していた釣竿を持った男へと、こちらからも距離を詰める。
腰を落として翻した一閃は美しく弧を描き、狙い違わず奴の首を斬り落とした。
その間に傍まで駆けてきた男が俺に向けて鉈を振り翳すが、それは身を僅かに傾げるだけで容易に避けることができ。
俺はそのままそいつの空いた脇腹を深く斬り裂いた。
沸き上がる、悲鳴。
[*前] [次#]
[目次]