出会い
そこは、未来。
もう、すぐそこまで迫っている祭りから、あの子を逃がすためのその場所を求めて。
そして。
あの村が辿る、行く末を知るために。
――……ここへと、飛んだ。
第一夜 「出逢い」
何かあてがあるわけではない。
ただ、目的を達するためのその手段は、例え時が流れ移ろうとも大きく変わることもないだろうと楽観的に考えて歩を進めているだけ。
その行動源となるのはただひとつ。
……あの子を救うためならば、なんだってしてやる。
ずっと抱き続けている、揺るぐことのない強いその想いだけを胸に、あの村では信じられないほどのひとの群の中を歩く。
突き刺さる視線が多いのは、きっとこの身に纏う漆黒の着流しのせいだろう。
見渡す限り、ここでは他の誰もが着物など着ておらず。
だからこその好奇だろうと、弥生は思った。
確かにそれも理由の一つなのだが、彼は全く気付いていない。
自らの容姿が、周囲を過ぎ去る他の者達の視線を集めるには充分な程、端正なものなのだということに。
「……とりあえず、書物か」
ぽつり、誰にともなくひとり呟く。
あの村には民俗学者も訪れていた。
ならば、少なからず彼の残した記述や、もしくはそれを元に書かれた書物があるはず。
もしも、祭により最悪の事態が引き起こされてしまったとしても、きっと何かしらの形で、村の外へと情報だけは持ち出されているだろうから。
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