再会



目が覚めた時。

俺がいた場所は、琴が置いてある間だった。


「ん……? 俺……」
「弥生……、私……」
「……深紅の声、か?」


どうやら無事だったみたいだな、俺も深紅も。

声はこの衝立の向こうから聞こえてきているようだし、たぶんそこに深紅がいるんだろう。

さっさと合流するか。


「弥生、私……あなたに、まだ……」
「ん? 俺に、何だ?」
「……ひっ!?」




――カシャンッ。



………………。




「……おいコラ、俺は生身だ」




再会するなり、いきなり射影機で俺を写し撮ってきた深紅に、俺は溜息混じりに突っ込んだ。













第十四夜 「再会」













あの時。

もう少しで、霧絵に捕まると思ったその瞬間。

俺を助けてくれたのは、あの白い着物を着た少女の霊だった。



――私をとめて。



その声を聞きながら意識を失った俺は、目が覚めた時には琴が置いてある間にいて。

今は、合流した深紅と現状を話し合いつつ、その部屋にあった隠し扉から奥へと向かい進んでいた。

聞いた話だと、どうやら深紅もあの少女……霧絵の幼い頃の姿をした霊に助けられていたらしい。

何にせよ、深紅も俺も無事で良かった。


「……弥生、本当に、何も聞いてないですよね?」
「だぁーから、何の話かって訊いてるだろうが」
「いいんですっ! 気にしないで下さいっ!」
「だったら蒸し返すなよっ」
「……そうですよね」


一体何だっていうんだ、深紅の奴。

さっきから、幾度となくよくわからないことばかり訊いてきて。

訊いてくる割には詳しく説明もしねえし、何がしたいんだかさっぱりわからない。

そんな不毛とも思える会話を繰り返しつつ辿り着いた場所は、場所こそ広めにはとられているが、どう見ても座敷牢にしか見えない場所だった。

とりあえず話は一旦区切って、そこで見つけた御神鏡の破片を回収しておく。

これで、ようやく四枚目か。



……それにしても。




「……ったく。こんなところに閉じ込められるなんて、やってらんねえよな」


この座敷牢、何か本当に腹立つな。

広さとかの問題なんかじゃなくて、何の罪を犯したわけでもないひとをこんな場所に幽閉するだなど、とてもじゃないがまったく理解できない。

理解したくもないけどな。


「あの人……兄さんとそっくりでした……」
「ん? ああ、あの霧絵と一緒にいた奴か。確かに似てたな」


四枚目の鏡の欠片を手にした時に頭の中に映し出されたその映像。

それは、生前の霧絵と……。



彼女の想い人だと思わしき、真冬によく似た男が寄り添いあう、穏やかな姿だった。



幸せそうに見えたそのふたりは、あの縄の儀式なんてもののせいで引き裂かれちまったわけで。



……最っ悪だな、本当に。




「……っと、深紅。あんまりのんびりしてられねえみてェだぞ」
「また、ですか……」








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