刀使い


目が覚めた時。



俺と深紅の足には、少し前に手に巻き付いた物と同じ縄が、巻き付いていた……。













第十一夜 「刀使い」













うん、あれだ。

多分、そうだ。


「深紅、真冬を怒らせるようなことをしただろ」
「何で私なんですか。弥生でしょう、それは」


例にもよって、再び俺たちは真冬に無視されて。

仕方がないから、宗方が残していた手記にあった、月詠堂とやらを目指す。



が。



またも例によって、封印されていた。

なんだこの野郎、何とかのひとつ覚えみてえにそこら中に面倒なこと仕掛けやがって。

嫌がらせだろ、絶対。

宗方で多少発散させた苛立ちを再び募らせ始めながらも、仕方なしにただいま仏間へと向かい中。


「あー……。本っ当面倒臭っ! 行ったりきたり、行ったりきたり。時間ねえってのに」


口に出して吐き出さねえと、やってられねえ。

正直、俺だって焦ってはいるんだからな。

もしも次に、キリエに捕まったら……。



俺も深紅も、もう手にも足にも縄が及んでいるから……次はねえな。



御神鏡の破片も、全然集まってねえし。

はーあ……、本っ当……。




「面倒だな。仕掛け……」
「そういうことは、自分で解いてみてから言って下さい」




きっぱりと告げる深紅は今、この仏間の仕掛けを解いている最中。

俺はと言えば、適当に座り込んでその様子をただ見ている。

ちまちましたことは嫌いなんだよ、苦手じゃあねえけどな。


「……力任せに開けちまわねえ?」
「わかりました。もう仕掛けを解けなんて言いませんから、黙っていてください」
「……深紅、冷たくねえか?」
「気のせいですよ」


そう言いながら、さっさと仕掛けを解いてゆく深紅。

で。

例の如く、そこにあった道具を手に入れた瞬間。

出現した怨霊、鬼面の男。



あー、今までも何度か見たような気がするな、あいつ。




「ふーん、なるほど。獲物は刀か……」


同じだな、などと思いつつ、すぐに深紅の傍へと移動。

彼女を背に庇う形をとる。


「弥生……」
「深紅は危ないから離れてろ。刀は俺の獲物だってこと、直接叩き込んでやる」
「……目的、おかしくなってませんか?」


呆れ気味に問われるが、もちろん気にしない。
俺は目を細めて、目の前の鬼面の男を見やり、その動きを窺う。

そして、男が刀を振り上げたその瞬間。




「残念。隙だらけだぜ?」




刀を抜きざまに、横薙ぎ一閃。




「ぁあぁあぁぁあっっ!」


悲鳴を上げて消えていく男を見やり、その呆気なさに少しばかり拍子抜けしつつも刀を仕舞った。

そこにすぐさま深紅が駆け寄ってくる。


「……悪ィな。逃げられた」


確かに消えはしたが、あれは単に逃げただけ。

まああんなんで易々消えるようなヤツが刀なんか使ってんじゃねえとも思うが……。

……また出てくるな、絶対。


「ま、次もまた俺が斬ってやるさ」
「……弥生って、男の人には容赦ないですよね、本当に」
「容赦する必要がねえだろ」
「……そうですか」


何だよ。

何でそこで呆れる。


「さあ、それじゃあ、先に進みましょうか」


何か、そう簡単に切り替えられると、ちょっと複雑なんだが……。

深紅の中での俺への認識、絶対おかしなことになってるだろ。



そう思う俺のことなど気にもせず、深紅はさっさと歩き出してしまった。















第十一夜・了


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