予感


「おい、コラ。ガキ。俺のものを盗もうなんざ、いい度胸してんじゃねぇか」
「うわぁーんっ!」
「……弥生、大人気ないです……」


散々、散々っ!

手間かけさせやがったあのガキを、俺はようやく古時計の中から引きずり出した。










第八夜 「予感」










全ての元凶であるジジイを滅したことで気持ち的に多少はすっきりとし。

だが、直後に現れた重苦しいまでの怨念を纏った女性の霊と接触したことにより、人形がたくさんある部屋まで飛ばされてしまった俺たち。

そこで俺は、自分の手に縄が巻き付けられた幻を視た。



……いや、あれは幻なんかじゃない。



あれは、きっと……。



ちょっと前に見た、おっさんの写真を思い出す。

そして、巴の言葉も。



縄が四肢と首に巻き付き。



見つかった死体は、その五カ所がすべて千切れていた。




「……ちっ。時間がねえってのに……」




多分、この手の縄が、他の箇所にまで及んだら……。

俺は……、いや、深紅も自分の手に縄が巻き付けられているのを見たと言っていたから、おそらく俺と深紅、二人とも。

辿るのは、おっさんと同じ末路か。



――急がねえと。俺はまだ、こんなところで死ぬわけにはいかねえし、深紅だって殺させるわけにはいかない。



そう、思っていたら……。



突然現れたガキの霊が、あの社の中で折角手に入れた御神鏡の破片を盗んで逃げやがった。



巴から聞いた話だが、どうやらその御神鏡があれば、黄泉の門を封じることができるとか。

そういうわけで、何が何でも鏡を取り戻さねばならないと、この年で鬼ごっこまがいのことをする羽目になったのだ。



井戸で気味の悪いモンは視るし。

鬼の口では真冬に逃げられるし。

その先には、何かの面がなければ行けないみたいだし。

掛け軸の仕掛けなんて、手の込んだ嫌がらせは解かされるし。

……あれ、壁をぶっ壊した方が早かったよな、絶対。



まあとにかく、そんなこんなで。




「回収っ!」
「ああっ!」


ガキからようやく、鏡の破片を回収。

まあ、腹は立つが、さすがに子供を斬るのは気が引ける。



だから……。




「深紅、消してやれ」




俺の一言に怯えるガキと、呆れた様子で溜息を吐く深紅。






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