「テメエが全ての元凶か! こーのっ、クソジジイっ!」
「ぎゃああぁぁあぁあっっ!」
「…………」


社の中でようやく見つけた全ての元凶を、俺はあらん限りの力を以て刀を振り回し斬りつけまくる。

あ、ちなみに深紅は、そんな俺たちを冷めた目で眺めていた。















第七夜 「縄」















「ちょっ! まい……っ、参った! も、もう勘弁してくれぇぇぇっ!」


追い込まれ、地べたに腰を抜かしたように座り込んだジジイは醜く顔を歪めてそう哀願する。

そんなジジイの鼻先に、俺は躊躇うことなく刀の切っ先を突きつけた。

そして、さっきの深紅に負けず劣らずの、満面の笑みってヤツを形作りジジイを見下ろす。


「するか」




ざっくし。




「ぎゃああぁぁあぁあぁあっっ!」


消えていくジジイの姿に鼻を鳴らし、とりあえず刀を鞘に収めた。

そして、清々しいまでの爽笑を深紅へと向ける。

これで多少は気が晴れたか。


「さ、行くぞ」
「……そうですね」


溜息混じりに頷く深紅の呆れ顔も今なら樹にならない、が、彼女のその手に見慣れない人形の姿を見つけ、それには首を傾げた。


「ん? 何だ、ソレ?」
「あ。どうやら、あの社の仕掛けを解くために必要みたいなので……。さっき弥生たちが追いかけっこをしていた間に、拾っておいたんです」
「追いかけっこって……」


そんな仲良く遊んでいたみたいな言い方、さすがに勘弁して欲しいんだが。

言葉のあてはめ方に思わず小さく呻き突っ込む俺を無視して、深紅はさっさと社に入っていき、さっさと仕掛けを解いてしまう。

すると、祭壇の中から、何やら鏡の破片のようなものが現れた。


「……これは……」


巴の言っていた、例の鏡……か?

確か、これを集めるようにと言ってたな。

そう思いながら、それを手に取った瞬間。



――……辺りに漂う空気が、急に重たくなる。




「! 弥生っ……!」


引きつった深紅の声を耳にすぐさま振り向くと、彼女は祭壇脇の大きな姿見を指し示し、顔色を青く染めていた。



そちらへと、目を向ければ…………。




「……っ!」




まずい!



これは……、あの時真冬を追っていた……。




「っ深紅っ! 射影機をっ!」


効果を発揮してくれるかは謎だが、それでもないよりはと思い、そう指示しながら、俺も刀の柄を握る。

だが、こちらが動き出すよりも早く、鏡から現れた女の霊が深紅の腕を掴み取った。


「……ひっ!」
「深紅っ!」


すぐに深紅から霊を引き離そうと、手を伸ばす。



その俺の手が、霊の手に触れたその瞬間……。







――……アナタニモ、オナジ、クルシミヲ……。






弾ける、視界。



一度暗転した後に視た、その光景は……。



いや……、視たのではない。



生々しいまでに、体験させられたのだ。





両手に。



両足に。



……そして、首に。





縄を巻きつけられて、各方向へと無理矢理強く強く引かれていく、そんな痛みと苦しみ……そして。







抗うことのできない、その絶対的な力の前に、ただ確実にじわじわと侵食してくる……死への、恐怖を。









「……っ!」


直後、弾かれたように上体を起こせば、そこは人形がたくさん置かれた、途中にも通ったあの部屋の中だった。


「……はぁ……っ」


まだ四肢と首を引きちぎろうとされているかのような苦しさと痛み……そして恐怖を覚えている気がして荒いままになっていた呼吸をゆっくりと正しながら、ふと腕に目をやる。







そこには、くっきりと、縄の跡が残されていた…………。












第七夜・了


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