サン


知ったのは。

陽気の暖かな、穏やかな春の日差しが心地よい、そんな日のことだった。













サン・ガイチュウ













……何か、変だ。

いや、茨羅がみんなに優しいのはいつものことなんだが……。


「あ、樹月! この間のことなんだけど……」


この間!?

この間のことって何だ!?



……おかしい。



やっぱり、変だ。



……茨羅と樹月の奴が、いつの間にか前よりも仲良くなっている気がする。



何なんだ、一体。

まさかあいつ、俺の可愛い妹をたぶらかしてるんじゃあ……っ!


「晴れて恋人同士になったみたいよ、あの二人」
「! 紗重!」


いつからそこに居たんだよ。

全然気付かなかったぞ。



いや、今はそれよりももっと重要な問題が……。




「恋人、だと?」
「そう。もう弥生以外、みんな知ってるよ」


いやいや、八重、俺以外っておかしいだろ。

何で俺を省くんだよ。


「樹月君が意図的にそうしたみたい」


何ッ!?


「私たちも茨羅から聞いたんじゃなくて、樹月君から聞いたんだし」
「報告してくれよ、二人共……」


呟きながら、俺は幼い頃から携えている刀の柄にそっと手を添えた。

そして黒澤家の双子の姉妹に、静かに告げる。




「じゃあ、俺……ちょっと殺ってくるな」




害虫を。



そう満面の笑顔で宣言した俺の背に、二人からの声が届く。




「だから樹月君、教えなかったんだと思う」




二人の言葉は、とりあえず聞こえなかったことにした。















サン・了


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