鳴子、御堂筋、今泉はそろって長椅子に腰かけた。
たまたま暇を3人で埋めることになって、他愛もない話をした。とは言っても自転車以外に接点のない3人は、必然的に自転車の話をした。自転車の話ならいつまでもしていられるだろう。ところが会話は意外なところから脱線した。

「そういえば、キミらんとこのマネージャー、トロすぎちゃうか」

鳴子と今泉は一瞬顔を見合わせた。御堂筋とマネージャーに接点はあっただろうか。今泉が「寒咲のことか」と尋ねると、御堂筋は音もなく首を振った。

「じゃあ最近入った方やな」
「あいつは、たしかに目が離せないな…」

最近入ったマネージャー。それは今までコミュ力だけで生きてきたような人間だ。誰にでも分け隔てなく接することができるけれど、それ以外のことはまるでダメ。何かすればほぼ必ずミスをするが、持前の笑顔でむしろ好印象という恐ろしい女だ。変わり者揃いといわれる自転車部の中に入れて全く遜色ない個性を放っている。

「こないだ、あいつ関西のレースで迷子になってん」
「絶対に自力で帰ってこれないって部員全員途方に暮れてたんだが、意外にも夜には帰ってきたな」
「親切な人に晩御飯いただいたんです〜ゆうて、ヘラヘラしとった。またどっかの誰かに笑顔振りまいたんやろな〜」
「それ、ボクや」
「えっ」
「あいつボクんち来たで」

鳴子と今泉はそっくり同じように目を丸くした。御堂筋が「仲良しやなぁ」などと思ってもないことを言い終わらないうちに、鳴子が食い気味で前のめった。

「御堂筋とあいつどういう関係なん!?」
「どういうて…別に、迷子を保護して帰しただけやよ」
「ほんまに!?ほんまにそれだけ!!?」
「トサカクン耳元でどならんといて」

息を荒くして御堂筋につめよる鳴子を今泉もそれとなくとめながら、目は事の詳細を知りたがって光っていた。

「…なんや、君らあの子のこと好きなん」
「せや!やからお前となんか間違いあったら困んねん!」

言い切った鳴子とは対照的に、今泉の反応は鈍い。ぽやっとした顔で「まあ心配だろ。チームメイトだし女だし」などとこぼしている。もしかして、と御堂筋は鳴子にそっと耳打ちをした。

「キモ泉クンもしかして自分の恋愛感情に気づいとらんの」
「…ほんま鋭いな御堂筋。スカシ自覚させるとライバル増えるから黙ってんねん」
「ほぉん、面白そうやね」
「そういう御堂筋は、どやねん」
「おい、何話してんだ」

ふてくされたような顔で二人をにらむ今泉にそろってため息を吐く。「弱泉クンには関係のない話やよ」「拗ねんなやスカシ、かわいないで」途端に冷めた二人に今泉は疑問符を浮かべた。
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