髪が赤くて、顔も赤くて、もう兎に角なにもかも真っ赤だった。
日光が照らしている場所とそうでない場所のコントラストが目を眩ませるこの部室。どちらかといえば寒い。それは、冬の間タイツを履いていたのを、今日からソックスにかえたから。
好きだと自覚してから赤い小物が増えた。彼は気付いているだろうか。
視界をちかちかと刺激する赤色。それは必ず彼を連想させ、私の心を高鳴らせる。しかし、今目の前にある赤は彼自身だ。真っ赤な瞳に射抜かれてすくむ。顔のすぐ横に手があって逃げることもできない。いわゆる壁ドン状態だ。近い。熱い。
もう、マトモなことは考えられない。
心臓がおかしくなってる。脳みそも。思考ができない。部室はとても寒いはずなのに、

「…今からマジメなハナシしてもええ?」

これがマジメなハナシをする格好か?視界を埋め尽くす鳴子。鳴子色に染まった視界。鳴子色に染められた私の脳みそ。
これ以上にないくらい近い。心臓が強く脈打つ。わけもなく涙が出そう。背中は壁に触れて冷たいのに、鳴子に触れそうな肌はありえないほど熱い。

「あんな、ワイな」

正直、期待してる。
鳴子の口が薄く開き、犬歯が覗く。僅かに空気を吸った音で、はち切れんばかりに心臓が高鳴った。

すると張り詰めた空気は一変。うなだれた鳴子に肩を掴まれる。

「あんな、わかるやろ?今からワイが言おうとしてること、」
「…たぶん」
「せやったら、そんなドキドキせんといて」

そんなこと言われても、私だって止められるならとっくにとめてる。

「アンタが好きや。笑てて欲しいんや。そんで、できるなら、ワイが笑わしてやりたい、ん、...」

語尾が震えていると思ったら、なんと彼は笑っていた。
いや我慢しようともしているらしい。震えながら口を抑えている。

「な、なんで笑うの!」
「いや、馬鹿にしてるとか、からかっとるんやないで。ほんま好き」

簡単に私の胸は高鳴る。

「返事聞かなくても、なんとなくわかってまうな!顔真っ赤やで」

カッカッカと軽快に笑う鳴子に返事もできずにいると、ぽんと頭に手を添えられた。そのまま無骨な手は髪を流れていく。ぱっと目を見ると、笑っているけどさっきと違う。優しさを孕んだ笑みにきゅっと胸が締まった。

「うれしーっちゅうこっちゃ。かわええって思っとるっちゅうことやねん」
「は、そんな、なんで、そんな恥ずかしいこと平気で」
「ワイより恥ずかしがっとるヤツが目の前におると、不思議とこっちは余裕でてくるもんなんやなあ〜」

至極単純。至極明快。
でも頭はごちゃごちゃだ。

「カッコつかへんなぁ、ワイら」

その、苦笑にもにた笑顔が、十二分に恰好いいなんて。
なんとなくくやしい。私はまだ何も言ってないし、ただ恥ずかしがってただけだ。

「今は勘弁しといたるけど、いつかはワイにも言ってな。好きって」

そういってくるりを身をひるがえし、「そろそろ部活始まんで。顔色いつもんにしとき〜」と言って部室を出ていこうとする鳴子をひっつかんで、こちらを向かせて、唇が触れ合わんばかりの距離で囁いた。

「好き、鳴子」

今度こそ顔も見せられないほど恥ずかしいので、そのまま走って部室から逃げた。後のことなんて知るか。幹ちゃんにメールして、皆が外周いってから部活に参加しよう。もう遠くの部室から鳴子が何か叫んでいるのを聞かないようにして、私は校舎に走って行った。

「なんちゅー女…まあ、ワイが惚れただけのことはある」
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