※個人的にはセーフ




「飲んで」

一松が差し出したのはジュースのようなものだった。紙パックに入っているので中身は見えない。ただ、容器に「気持ち(イイ)クスリ」と書かれている。
…正直、飲む気になれない。
しかし、一松が穴が開きそうなほどこちらを見てくるので、怪しいと思いつつ私はそれを飲むしかなかった。
甘い。吐き気をもよおしそうなほどの、暴力的な甘さだ。私が全て飲み干すのを見た一松は満足そうな顔で「どう」と訪ねてきた。

「甘いよ…すっごく」
「味じゃなくて。」
「え…?」
「即効性あるって言われたんだけど」

即効性?何のこと?何か良くない展開になっているような気がするけど、考えが纏まらない。ぼーっと一松と見つめ合うと、一松が私のすぐそばまで寄ってきた。そのまま押し倒される。

「媚薬」
「びやく、」

頭がとろとろと溶かされて、ちっとも働かない。びやくってなんだっけ。ばかみたいにオウム返しする私を見下ろした一松は口を薄く開くように笑った。
手が耳に添えられて、そのまま撫でられる。輪郭をなぞるように指を動かしたかと思えば、浅く穴に突っ込んでくる。両耳を一松に蹂躙されると全身にぞわぞわとこみ上げるものがあり、思わず一松の手を掴んだ。しかしそれは一松を盛り上げる要素になりはしても、抑止力にはならなかった。掴んでいた手を逆に捕まえられ、今度は唇が耳に寄せられた。フゥ、と息を当てられるだけで、自然と腰がよじれる。

「いちまつ、やめ」
「デカパンに作らせたんだけどさ、どう?効く?」
「わかんない…」
「でもいつもより反応いいよね、」
「そんな、こと」

ある。
気持ちいい、きもちいい。もどかしい、もっと欲しい。
一松は一言「顔に全部書いてあるよ」と呟いて耳に舌を這わせた。自分の口から大げさな声が漏れて、それが粘膜の音にかき消されて、深くなって…起こる全ての事象が、最早行為を盛り上げるスパイスにしかならなかった。

「い、ち、まつ」
「なに」
「キス、したい」
「…いいよ」

一松はすんなりと耳から口を離し、私が淫らに舌を差し出すのを嬉しそうに見つめた。そのまま勢いよく繋がってしまえば、思考など邪魔でしかない。

「甘…」

唇がくっつく距離で呟いた。私の口の中にはまだ、あのジュースが残っていたのだろう。
ぺろりと自分の唇を舐めあげ、ごくりと喉仏を上下させた一松はここ一番の笑みを浮かべた。

「俺も飲んじゃったね。どうしよっか」
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