※こちらはきみで童貞卒業したいカラ松の続きです。さきにこちらを読むことをお勧めします。






「デートしませんか」

デート、その言葉はほんの半月ほど前に私が言われた言葉だった。
カラ松さんはおもしろい顔をして、ふにゃふにゃ「うん」と返事をした。ヘタレめ。

あの後、私がお風呂場へ逃げ出したあとの事が気になる人もいるだろうから、先にそっちの話をしよう。
あらかじめ断っておくが、私はまだ処女だし、カラ松さんはまだ童貞だ。
私がそれなりに人生最大の一大決心のもと、処女を捨てる決意を固め、ほかほかのお風呂からベッドルームに戻ると、カラ松さんは元のドヘタレに戻っており、何故か床に正座していた。私の足音を聞いてぱっと顔をこちらに向けたその顔は、まあなんというかかわいかった。
赤い頬、男らしい首筋、濡れた瞳、湿った柔らかい髪。僅かに開いた口からは色気が駄々漏れだった。ってなんで私がこんなこと。
とりあえずカラ松さんに立つように促し、ベッドに二人で座った。

「お風呂、入れますよ」
「ああ」
「先に入りますか?」
「…ああ」
「……カラ松さん?」

カラ松さんがドキっとしたのがわかった。視線が絡み合って、空気が動いた。シーツの上に無造作に置かれた私の手に、カラ松さんのそれが重なる。ギッ、と安いスプリングが鳴って、カラ松さんが大きくこちらに身を乗り出した。
これからの展開をありありと想像させるシチュエーションで満たされた空間を裂くように、カラ松さんは口を開いた。

「ど、どうすればいいかわからない…」
「え、」
「こうなるって初めからわかっていれば、それなりに勉強してきたんだが…」

私は「…そっか」と言うしかなかった。そっか…いきなりだもんね。それなりに知識も必要だもんね、場の雰囲気に流されてわからないままに事に及んでしまうのは女からしても負担が大きいし、ちゃんとそう言ってくれたカラ松さんは素敵だと思う。
…気にしないでね。
私のこの言葉は心からのものだったけど、カラ松さんの顔は浮かばない。

「なんというか…ごめん」

カラ松さんはほぼ泣いていた。自分が情けないと泣くカラ松さんを慰めながら、カラ松さんを可愛いと思ってしまう自分は、やっぱりちょっとヘンだろうか。
兎にも角にも、こうして私たちは本当に休憩だけで、ホテルを後にした。


そういうことがあったから、ばつが悪いのもあるんだろう。カラ松さんの目はサングラス越しでもわかるくらい右往左往しており、決してこちらを見ることがない。

「勉強しましたか?」
「べっ…」

顔を赤くしてこちらを見る。私はつとめて笑顔を見せた。
あなたに処女を捧げたい
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -