僭越ながら、私は松野十四松と恋人としてお付き合いさせてもらっている。
松野家の兄弟たちにはかなり驚かれたけど、私にとってはなにも不思議なことではない。私は十四松を男性として好きだし、十四松も私を異性として好きになってくれてると感じている。十四松の持つ不思議な世界は私には理解できない時の方が多いし、突飛な行動が目につきがちだけど、彼が誰よりも優しいことを私はよく知っている。
そして私はもっと十四松を知りたいと思っていた。もっといろんな顔が見たい。もっと十四松を知って、もっと好きになりたい。それは、恋人に対して持つごく普通の感情だと思う。
そういえばいつも、私は十四松の不思議な空気感に流されてばかりだ。それはそれで楽しいけど、たまには私が空気を作るのも悪くない。

「十四松〜あそぼう」
「あそぶ?いいよ!何して遊ぶ?」

今日も私は松野家に遊びに来ていた。ここは二階の部屋で、下の居間にはほかの兄弟もたくさんいた。
十四松は被っていた三角コーンを放り投げ、にこにこと目の前に座った。膝小僧が触れ合う距離だ。
何をしようか。何も考えてないや。十四松は長い袖越しに私の手の平をもてあそんで「なにする?」「野球?」とこちらを見ている。私はそんな十四松の手を袖越しに握り、少しこちらに引いた。「なに?」と笑う十四松との距離がまた縮まる。
十四松みたいに突飛なことはできないけど、思い切ってキスをした。いつも口空いてるからぎりぎりはじっこに。
ちゅっと触れた十四松の唇は乾燥してかさかさしていた。


「………」
「え、あれ?十四松?」
「……あー…」

十四松は唇が離れてからも微動だにしなかった。ただただ笑顔でこちらを見ている。よく考えなくてもこれは初めてのキスだ。
もしかしてマズかった?
と、思っていたら、長い時間を空けてじわりじわりと十四松の頬に熱が差していった。心なしか目も泳いでいるし、口元が震えている。
え、なにこれ。十四松のこんな顔、初めてみた。
十四松はそっと私の唇がふれた場所に触れた。そこを指でなぞる。久しぶりに見た十四松の指は骨ばっている。

「…………ねえ、」
「うん」
「もっかいしていい、俺から」

残念ながら、十四松の表情をうまく形用できる言葉を私は知らない。嬉しそうな、恥ずかしそうな、真剣な、泣きそうな、男らしい、かわいい、十四松の、顔だ。
2回目のキスの前に十四松はぺろりと自分の唇を舐めた。
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