どこかから帰ってきた御堂筋くんは、部室でひとりで泣いている私を見て足を止めた。
「なんで君が泣いとるん」
 顔を見ることはできなかった。きっと嫌な顔をしていると思うから。
 御堂筋くんは持っていた仏花を机に置いて、撫でると言うにはあまりに拙い動作で私の頭を弄んだ。
「君が泣く理由ないやろ、泣くなキモい」

 私の涙はまったくのエゴで、これは御堂筋くんが最も忌むであろう同情だ。それでも私を突き放さないのは、自意識過剰かもしれないけれど御堂筋くんにとって私が必要だからだろう。
でも、私はそこまで大人じゃない。ぎこちない御堂筋くんの手の動きに合わせて涙を落とすことしかできなかった。

 窓の外はもう夕焼けで黄色に染まっていた。「帰ろう」と私が声をかけると、御堂筋くんは「送るわ」と、ただまっすぐに空を見てつぶやいた。
 私には、自転車を押して並んで歩いてくれる御堂筋くんがいるだけで、世界は十分幸せなように見えた。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -