art/hu/rの「きみの/カ/ラダはぼ/くらの/も/の」という歌をイメージして書いています。
スラッシュ抜きで。ダークな内容なので注意
俺ら六つ子は6人でひとつだ。それは俺らにそれぞれ自我が芽生え、個性が生まれてからも、根本的には変わってない。はたから見たらわからないようなことも俺たちの間ならわかるし、今までそうやって生きてきた。
「お邪魔します」
「おかえり。ただいまでいいのに」
来た。俺らが一番欲しいもの。
俺らと同い年の少女は、「そんなの悪いよ」と言ってはにかんだ。口ではそう言いつつ嬉しそうに。
こいつの両親はこいつに無関心なんだ。世界のほとんどの人間がそうだ。俺たち6人以外、こいつに関心があるやつなんていないだろう。今まで6人がかりでそういう風にしてきた。とにかくこいつは子ども時代に貰うはずのたくさんの愛情を、6人分しか貰ってないんだ。だから周りに馴染めずに、今日もひとりでうちに来る。俺たちはそれを優しく迎える。なんて可愛いんだろう。
「ま、入れよ。皆いまいないけど」
「うん」
さっきは欲しいもの、なんて言い方をしたけど、もう手に入ってるようなものなんだ。こいつは俺ら以外頼れないし、俺らはそれを絶対裏切らない。
でもそれじゃあ足りない。もっと欲しい。全部俺のものにしたい。心も体も、髪の毛一本から涙一滴まで。
「最近、うまくやれてるか?」
「…あ、うん」
わかりやすく表情が陰った。
うまくやれてる訳ないよな、知ってるよ。
「大丈夫、俺たちがついてる」
「…だよね、みんながいる。から、大丈夫…」
「俺たちにできることならなんでもやるよ。何がしてほしい?」
彼女の瞳が大きく揺れた。水面のようにゆらゆらと揺蕩う。そっと手を握ってやると、ほろりとその水が落ちた。今落ちたその涙も、まつげで揺れる水滴たちも、全部、もう、この手の中に握りしめてしまいたい。
兄弟は抜け駆けだなんて言って怒るだろうか。
「あいされたい」
ああ、ゾクゾクする。
俺いま、笑ってないだろうか。
か細い体を強く抱きしめた。嗚咽が聞こえる。体が燃えそうだ。幸せ、幸せだ。
いいよ、俺たちが愛してあげる。ずっとずっと、いつまでも、一緒に居よう。俺たちといるのが一番幸せになれる。俺が幸せにしてあげる。
「俺は愛してるよ」
「…」
彼女は俺の名前を読んだ。さあ、じゃあ俺は誰でしょう?
きみのカラダは俺らのもの。それでいい。
でも、きみの心は俺だけのものだ。