今日は今年1,2を争う最低な一日だった。まず寝坊して、朝ごはん抜き。化粧も髪も時間をかけられず失敗、服もなんだかちぐはぐだし寒すぎる。次に定期を忘れて無駄な出費。そして提出しなければならなかった書類の存在をすっかり忘れていて大目玉、帰宅の時間が大幅にずれこむというありさまだった。ここまで不運が続くと自信がなくなってくる。全て私が悪いことだし。
なんだかこのまま家に帰りたくない。帰り道から適当なところで曲がった。行く当てもなくふらふら歩いていると、公園が見えてきた。寒いけど暫く座っていよう。
手持無沙汰すぎて、イヤホンを刺して適当にシャッフルてみた。見事にアンニュイな曲ばかり。かといってハイテンションな歌を聞く気にもなれないし、もう今日はこういう日なんだな。
はあ、なんか疲れた。
ちょっと泣きそう。

「なにしてんの?」
「うっ……わひゃあ!」

急に冷え切った何かが私の首を掴んだ。顔をあげると見知った顔。私があまりに素っ頓狂な声をあげたものだから、犯人であるおそ松はくつくつ笑っている。

「笑わないでよ」
「いや…わ、わひゃあ、って…わひゃあって……」
「うるっさいな!驚かさないでよ!」

腹を抱えて笑うおそ松の頭を軽くはたいた。「いでっ」という声と共に少しは笑いが収まったようだ。
おそ松は指で涙をはらいながら「で、なんでこんなとこにいんの?」と話を戻した。

「なんで、って」
「いつもこんなとこにいないじゃん」
「そうだけど」

家に一人でいるのが無性に寂しくて、でも誰にも会いたくなくてこんなところにいるなんて言いたくなかった。「おそ松こそ」「俺はパチンコの帰り〜」確かに、ここは近所のパチンコ屋とおそ松たちの家のなかほどにある。返す言葉のない私が黙り込んでおそ松を見上げると、何故かいつもより少しかっこよく見えた。

「あれ、泣いてる?」
「泣いてないよ」
「じゃ、泣きそうなんだ」

からかうような声音ではなかった。むしろ優しいような。いや、おそ松に限って優しいなんてことある訳ないか。頭ではそう思っても、優しさに飢えた私の心はあっさり心情を吐露してしまった。

「ちょっと今日…よくないこと続きだったっていうか」
「うん」
「気分が落ち込んでて」
「うん」
「なんでもいいから、ちょっと私のこと褒めてくれない?」

言い終わる時には私は完全に俯いていた。これは完全に言い過ぎだ、と思った。褒めてなんて、子どもか。今日は厄日だ。おそ松もいい加減ニヤニヤと私をからかう体制にはいっているに違いない。
何か言われる前に撤回しようと頭をあげかけるが、冷たい掌に頭を押さえられた。そのままわさわさと撫でられる。

「かわいいなあ、お前は」
「ちょっと、ばかにしないでよ」
「いやいやほんとに思ってるよ。かわいーなあ」

それにお前が言ったんだろ、褒めてって。そう続けられると返す言葉がない。
頭を撫でられたのなんていつぶりだろう。最後に褒められたのは?いつも頑張っているつもりではあるけど、私の頑張りを認めてくれる人はいるのだろうか。
一定のリズムで頭を撫でられ続けていると、目の間がぎゅっとした。あ、やばい。

「おそ松、もう」
「おまえはすごいよ、がんばってる」
「いいから…」
「俺ちゃんと見てるからさ、これでも」

もう無理だった。抑えようと思っても嗚咽が漏れる。
頭を撫でる手が少し強くなった。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -