私の講義のスケジュールなんておかまいなしにときたま我が家に押しかけるニート、十四松は開口一番こう言い放った。

「俺、なまえとひとつになりたいんだよね」

私は盛大にむせた。
ひとつになりたい?いや、違う。私は何を考えてるんだ。十四松に限ってそんな。自分の恥ずかしい勘違いを認めるために「どういう意味?」と聞いても「そのまんま!」としか帰ってこない。困った。

「一緒に遊ぶとか?」
「ちがうよ、セックス」

聞かなきゃよかった。
確かに十四松も成人男性だし、そういう欲もあるだろう。だけど、なんか、なんといえばいいのか。突然過ぎないか?
普通、松野家の連中に普通を求めるのも酷な話だが、こういうのってもっと落ち着いてするべき話なんじゃないだろうか。そもそも十四松にそういう概念があるのか謎だ。
十四松はいつも通り私のベッドで飛び跳ねている。毎度のことなので驚きはしないが、平日の昼間とはいえ周りの部屋に迷惑だからやめてほしい。止めるためにベッドに近寄ると、ジャンプした十四松がそのままこちらに飛んできた。
当然ぶつかって倒れる。まさしく押し倒されてる状況。
あ、ヤバい。笑ってるけど笑ってない。十四松の目がガチだ。

「なまえなんかまつげ長くない?」
「ちょっと、十四松」
「まつげ長い人って性欲強いらしーよ!」

だからしよ、とでも言わんばかりの言い草だ。身体能力の差からして逃げ出すのは無理だろう。かと言って私が十四松を説き伏せる自信もない。
あれやこれやと考えているとぐっと十四松の顔が近づいて来た。それこそまつげが触れそうなくらい。そして私の上に乗っている腰をぐっと揺らす。

「俺って、なまえのことすきなのかも」
「だいたいなんでいきなり、私と、そういうことになるの」

つとめて冷静に、なんて考えてる時点で十分冷静ではないけど、そう、十四松がいきなりこんな行動にでるのには何かわけがある筈だ。訳がわかれば、この訳のわからない状況から抜け出せるかも。
十四松は何を考えてるのか考えてないのか、息のかかる距離で教えてくれた。

「なまえとひとつになりたいんだよねって言ったらおそ松兄さんが恋じゃね?って!」

とりあえず長男シメる。
十四松はあれで結構長男に懐いているので、私が「多分恋じゃないよ」と言っても「恋らしーよ」と長男の意見を尊重する。ほんと2,3発殴る。腰をゆらゆらとゆらす十四松が「ねえもういい?」と私を急かす。

「セックスはやめとこうよ」
「好きだとセックスすんでしょ?」
「うん…両想いならね」
「なまえは?どう?俺のこと好き?」
「好き…だけど、意味がちが「ほんと?!やったー!」
「ちょっと、じゅうしまつ」

ああ、考えるのがめんどうになってきた。私じゃ十四松を止められないし、本人は止まる気がさらさらない。私は最初から詰んでいるのだ。私の服をめくろうとする十四松の手にそっと触れた。

「せめて…優しくして」
「ん?勿論!なまえのこと好きだから、やさしくするよ」


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