またたく


「俺、ちゃんと戦うよ。主のためにさ。へへ」

そう言った加州を私は少し不安でも笑顔で送りだした。

「ごめんなさい。負けちゃって」

しかし帰ってきた加州は今にも泣きそうで、ところどころ決して軽傷とは言えない傷を作っていた。私は大慌てで慣れない和服を引きずって加州に駆け寄る。恐る恐ると言った風に私を見つめる加州に怪我の具合を聞くと、瞳いっぱいに貯めた涙を一筋こぼし、「心配してくれるの?」と消えそうな声でつぶやいた。

「当然じゃない!泣くなんて、そんなに痛いの?」
「ううん、ううん。痛くないよ。ありがとう、主。ありがとう…」

ぽたぽたと涙をこぼす加州の手をとって、手入れ部屋に招いた。
幸いそこまで酷いけがはしておらず、刀を手入れすると加州の体も見違えるように綺麗になった。それでもまだ少し悲しそうな加州に、「気にしないで」と頭を撫でた。その日あったばかりの人に気安く触れるのは失礼かもと思いはしたが、刀である彼にそんな常識は存在しなかったらしく、少し恥ずかしそうに「ありがと」と視線を逸らした。

「それじゃあ、気を取り直して仲間を増やしてみよう。仲間が増えればきっと勝てるよ」

そうは言ったものの、イチから刀を作るのは初めてだ。基準もなにもわかったものではないので、適当に資材の量を決めてやってみた。頼もしい表情の式神は資材を受け取ると気持ちのいいカーンという鋼をうつ音を二度響かせた後、私に小ぶりな刀を差しだした。加州も関心した様子でその様を見ている。
私は刀を受け取るり、先ほどと同じようにに集中する。
目を開けると可憐で小柄な少年が何かにおびえたようにそこにいた。小さな虎を複数連れている。

「僕は、五虎退です。あの……しりぞけてないです。すみません。だって、虎がかわいそうなんで」
「しりぞけ…?」
「僕があの、謙信公へのお土産で。その時、なんというか、調子のいいお話がつけられて、僕、虎をいろいろやっつけたことになったんですけど…」

ぐす。
少年の綺麗な顔がゆがむ。これはいけないと思いはしたものの、何もできず彼の顔はくしゃくしゃになってしまった。

「ほんとはただの短刀でぇ・・・ぐす」
「き、気にしないで。大丈夫、あなた、五虎退って言うのね」
「はいぃ…よろしくお願いします」
「ふぅーん、結構かわいいじゃん。…よろしく」

涙でぬれてしまった五虎退の顔を優しくぬぐう。刀剣って結構ナイーブな子が多いのかな。それもそうか、生まれて初めて心を持たされたんだから。精神年齢は見た目に反映されているようだし、うまくコントロールできなくても仕方がない。
落ち着いた五虎退に、軽く今後の説明をする。そのうち陽が傾いてきたので、出撃は明日にしようということにした。
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