氷解の指


ウェルカムレースも終わり、本格的な部活動が始まった。それに伴って私の仕事量も増え、だんだん忙しくなってきた。それは充実した毎日で、ああ、青春を部活動に捧げるってこんな感じかなと始まって少しも経っていないのに考えてしまうほどだった。
最初は不安要素だった今泉さんも、今ではよくしてくれる。
…というか、今まで苦手意識を持っていた反動からか、会話をするのが楽しくてなんでも報告するようになってしまった。今泉さんも迷惑そうではないし、たまに褒めてもらえるから嬉しい。

「…おい、みょうじ」
「はいっ、何でしょう」

ボトルか、タオルか。今泉さんに声をかけられて振り向けば、どうやらそのどちらでもないらしい。

「…自転車についてもっと知りたいか?」

ええもちろん…。
私の粗末な返事はそのまま地面に落ちた。数秒の沈黙が私と今泉さんを丸く包む。なんだこの異様な空間は。よく話すようになったとは言え、今泉さんの考えていることはよくわからない。最低限の言葉で表現するから、真意がつかみにくいのだ。

「なら、部活中の暇なとき教えてやる」
「あ、ありがとうございます」

そういえば、今泉さんから私になにか声をかけてくれたのは初めてだ。よくわからないけど、ここは素直に喜ぼう。
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