銀河ドロシーの宝石


私はただ、少し下を向いて今泉さんの少し後ろを歩いていた。
当然会話はない。そりゃそうだ。きっと今泉さんはさっさと買い物を終わらせて練習に合流したいに違いない。今泉さんは怖いけど、彼が一生懸命に練習に取り組んでいることはよく知っている。練習の邪魔をするなんて本意ではないのだ。それを手嶋さんに言っても上手く躱されてしまうだろうけど。

「…」
「…、」
「わっ、」

急に何かにぶつかった。あまり痛くはない。今泉さんが急に立ち止まったらしい。訳がわからず困っていると今泉さんは私を一度見、きくひとつ息を吐いた後、ぽつりぽつりと話しはじめた。自分は自転車に本気で取り組んでいて、思わずキツくあたってしまうことがあること、他の部員は自転車を通じて会話する機会もあるがみょうじにはそれがなくて困っていること。決してみょうじが嫌いと言うわけではないこと。そして、自分はもともと明るい性格ではないので、怖いと思われてしまうのもわかる。だけどこれからは部員同士もう少し仲良くやろう。と。

「…みょうじはどうして、自転車競技部に入ったんだ?」

みょうじは驚いた。今泉さんが自分に歩み寄ってくれていること、というより、なんて不器用な人なんだ。という風に。
嬉しくなってオーバー気味に入学してすぐ自転車競技部の練習を見て感動したことを伝えると、今泉はふ、と顔を綻ばせ、
「お前とは仲良くやれそうだ」
とつぶやいた。その笑顔をみて、初めて今泉をカッコイイと言う女子の気持ちがわかった。
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