青となにか


 目の前を風が抜けていくようだった。その光景に目を奪われる。それが通り過ぎてからもしばらく、黄色と赤のまばゆい閃光が未だに脳裏でちかちか輝いていた。その中に一際輝く真っ青な自転車が、私の心を震わせた。

「自転車、競技部…」

これが、私の青春の幕開けだ。



マネージャーとして総北高校自転車部の門を叩いたことについて、後悔は一切していない。3年の手嶋さんと青八木さん、古賀さんは優しくてとてもよくしてくれる。同じマネージャーで2年生の寒咲さんは、可愛いし自転車について詳しいし、私の入部をとても喜んでくれて、一緒に仕事をするのがとても楽しい。同じく2年の小野田さんは去年のインターハイで優勝したすごい人らしい。全然そんな風に見えないって言ったら失礼かもしれないけど、やさしくていい人だ。鳴子さんも、元気で明るくて楽しくて、でも真剣な時もあって好きだ。

でも、今泉さんは苦手だ。
いつもピリピリしていて、目つきが鋭い。クラスの女子は「今泉さんってシュッとしててカッコイイよね〜」なんて持て囃すけど、私には怖い人に見える。私が少しでももたついたりミスするとギロッて睨む。しかも、私にだけ。他の1年には冷静なアドバイスをしていることはあっても、無言でにらみつけることはない。女が嫌いなのかと思っても、寒咲さんにはむしろフランクだ。考えすぎかもしれないけれど、私は今泉さんに嫌われている気がする。

「まー、スカシとるわぁ」
「鳴子さん…私、嫌われてるんですかね」
「スカシは嫌いなヤツとかおらんと思うで」
「え」
「やかましいのがヤなだけで人間ぎらいちゃうからな、あいつ。しかも自分からは近寄らんやろ。あんま喋らんとスカシとるし。それが他人を寄せ付けんように見えるんやないかなぁ。話してみれば意外とボケボケやで。」

「せやからこそ、スカシのみょうじちゃんへの態度が意味不明なんやけどな〜。ま、嫌われとるっちゅーことだけはないと思うわ。何考えとんのかわからん不思議王子やけど、気長に見たってや」
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