こっちを見ろ
荒北さんはニオイで人格をあてられる。部内では有名な話だ。事実、彼は頼まれてもいないのに新入部員のニオイを嗅いで回り、本人も無自覚の自転車乗りとしての性質を見事言い当てて見せている。
そんな荒北さんが私のニオイを好きだと言った。なりふり構わず堪能したくなってしまうほど好きなニオイらしい。そのせいで色々あったけど、私はふと考えた。というより気づいた。好きなニオイ、それは、好きな人格ということになるんじゃないのか。
思考がそこまでたどり着いた途端、顔に熱が集まる。カッカと火照る私を、じっと見ていた荒北さんはニタリと笑んだ。

「やっと気づいたァ?」

やっぱり荒北さんの性格は良いとは言えない。真実にたどり着いて慌てふためく私を見て悦んでいる。そして、さっきの言葉。悔しくなって荒北さんを睨むけど、そこにはさっきと変わらない飄々とした荒北さんがいるだけだ。

「荒北さんは最初から気づいてたんですか?」
「気づいてたらあんな醜態晒すわけねーだろ」

私の言葉をさっさと切って捨てた。その口が私の名前を呼ぶ。

「俺のこと好きなんだろ」
「…荒北さん、あのね」

とっくに書き終わっていた日誌を閉じて、荒北さんの手に自分の手を重ねる。今度は事態を飲み込めてない荒北さんに、私が笑顔をみせる番だ。

「私最初から荒北さんのことが好きでしたよ」
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