まばゆい獣
あれから荒北さんに呼び出されることはなくなった。
ただあきらかに日常的に距離が近くなった。よく私の仕事を手伝ってくれるようになったし、向けられる表情もなんだかやわらかい。狼に懐かれたというべきか。
そして私にとって一番良かったのは、不気味さがなくなったこと。

「あの、もう嗅がなくていいんですか」

部活の終了後、先日の代わりに部誌を書く私の隣で携帯を触っていた荒北さんは、ふらりとこちらを見て、口を薄く開いた。そのまま言葉を探すように僅かに沈黙を咀嚼して、苦笑した。

「わかんねェ?」

ああ、変わったんだ、と思った。荒北さんと私の関係が。具体的な物を求める関係じゃなくなったんだ。だけど私には、荒北さんが私に何を求めているのかわからない。わからないことがなんなのかすらわからないのだから、私は本当にわからない。雰囲気で私の心境を察したのか、荒北さんは

「俺さァ、俺のこと好きなヤツのニオイわかんだよ」

その瞳はまっすぐに、ただまっすぐに私を見ていた。
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