開花のけだもの
「った!」
「あ、ゴメン、ゴメンネ。ミョウジチャン、ゴメンネ」

 とうとう私は荒北さんに噛みつかれた。彼についてまわる狼というイメージで、なんとなく噛みつかれてしまうような気はしていた。実際に噛みつかれてみると血が滲んで非常に痛い。ちょっと涙が出そう。狂ったようにゴメンネを連呼していた荒北さんは、私の涙を見て少し震え、慌てたように噛み跡を舐めだした。思わず「ぅえ」と変な声が出た。じりじりと痛む首のつけねに、荒北さんの薄い唇が少し触れ、熱い舌が血の滲む肌を撫でる。その時になってやっと、私は服がかなりはだけていることに気が付いた。

「あ、荒北さん」
「フゥ、ン、ハァ…ミョウジチャァン…」

 荒北さんは私を泣き止ませるという当初の目的をすっかり忘れ、私のブラウスの襟を握りしめて自分の用事に一生懸命になっていた。襟を自分の顔に引き寄せるので、私はつられて上に上がり、つまさき立ちを強制された。

 いままでと明らかに様子がおかしい。背中をわずかな恐怖が走り抜け、涙がひっこんだ。荒北さんの尖った歯がまた肌に触れる。思わず荒北さんのワイシャツを掴むが、牙が突き立てられることはなく、強張った体は再び熱い熱い舌にもっていかれた。
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