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「やっと大きいボクとしたんだから、次は小さいボクとですよね?マキナ」



夜になっても元の姿に戻らないギルガメッシュに、マキナがどう接して良いかが余計にわからなくなっていた丁度その時だった。突然の爆弾発言に、マキナは真面目に戦慄した。



「…冗談言わないで下さい…」
「ボクが冗談言ってるように見えます?」
「……」



マキナは幼年体のギルガメッシュが苦手である。それはとても。とてつもなく。幼年体のギルガメッシュは、正直に言って怖い。同じく年下でも、まさかの、あのレオよりも怖いのだ。何しろ向こうは嗜虐を知らないが、こちらは下手をすれば嗜虐の塊である。否、最早そうとしか思えないのだが、絶対にそうと言い切れないのが性質(タチ)が悪い。“純真無垢”という名の砂糖の衣をこれでもかと被って防衛線を張っている。流石に最近は、まず間違いなく確信犯であるとマキナも理解したのだが。しかしそれを差し置いても、やはり子供である。マキナも年齢的にはまだ同様に子供の域とはいえ…相手が年下である以上、大人げの無い行動は取れない。



「本当はわかってるクセに、冗談であって欲しいっていうただの願望でしょ?マキナの」



四つんばいで、或いは子犬のように擦り寄ってくる…否、詰め寄ってくるギルガメッシュ(小)。マキナの眼前で満面の笑みを浮かべるが、正直憚りがない分、成年体よりも余程剥き出されている威圧にマキナは慄く。“冗談であって欲しい”。それは願望というよりも、そうでなければ困るのだ。士郎は幼年体のギルガメッシュを見て、そのまま大人になってくれれば…と言うが――マキナにしてみれば寧ろ大人になってある意味丸くなったとすら思う。



「未遂だって何度もあったわけだし…今更じゃないですか?」



躊躇無くマキナの着衣に手を掛けようとしたその寸前に、マキナは身を引き、そうして立ち上がって…それこそ今までどんな敵相手でも例がなかった程、必死に駆け出して部屋の戸に手をかけようとした。またしても、セイバーに助けを求める為に。しかし慢心を知らない幼い王に対しては無駄な足掻きに他ならない。



「ほらほら、逃げない逃げない」
「ッ──…!!」



軽く放った鎖は決して目標を違えることなく一直線に飛び、マキナの左手を、右手をほとんど同時に絡めとる。ギルガメッシュが軽く鎖を引けば、それこそ無情に…マキナは惨めに仰向けに引っ繰り返って畳の上を引き摺られた。また目と鼻の先の距離まで、振り出しに。そして今度はマキナの身体の自由が利かず、事態は悪化の一途を辿る。



「お願いします、お願いしますから本当にやめて…ください…!」



それこそ相手が年下であろうと無関係に、心の底からマキナは懇願する。既にそんなマキナの上に跨って、或いは冷たく見下ろしていたギルガメッシュだったが、何を思ったか、それこそ子供らしく頬を膨らませてみせる。


「…そんなに嫌ですか?マキナは小さいボクのこと嫌いですか?」
「嫌いなわけじゃ…ないですけど…」
「そうですよね、マキナは年下は趣味じゃないんだから。マキナは大きいボクに虐められるのが嬉しくて嬉しくて仕方ないんだから。」
「…!」



その言葉に思わずマキナの顔が紅潮する。しかしそれはいつもと違った意味での羞恥からだった。冷や汗すらかいて、言葉を失う――そんなマキナを見て、相変わらず意地悪そうな笑みを浮かべた。



「恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか、ボクだってそんなマキナが好きですから」
「……」
「ああ、でも」



ふと、何かを思いついたらしく、顎に手を遣り思案顔になるギルガメッシュ。



「よく考えたら…大きいボクも流石にマキナが今のボクくらい幼かったら手を出さないですね…」
「…でしょ…!?常識的に考えてフツー出しませんよ…!」
「はいはい、マキナが常識を語らない」
「……」
「そうだなあ、確かにフェアじゃないですよねー」



無言でマキナを見下ろす紅い双眸は、いつも以上に何を考えているかわからない。が、何かを思案しているというよりは既に何か(恐らく)ロクでもないことを思いついており、それを実行に移すかどうかを、見定めているように見えた。



「じゃあこうしましょう」



思い立って、すぐに行動に移す辺り既にマキナの意思は関係ないらしく――宝物庫(バビロン)から小瓶を取り出し、それを金の杯の中に少量注いだ。嫌がるマキナの口の中に流し込み、変化が終わるのを待つ。



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