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「これは一体どういうことなの?衛宮くん」



 説明してくれるかしら?と、その笑顔に衛宮家の夜の食卓、激震──



Follow ataraxiaFar away from Mayhem...



「ちょっと見ない間にどうして居間が金色に輝いていて、狭くなっていて…料理が洋風に傾いていて──こんなにお金の匂いがするのかしら?」



 …その前に、もっと大きな違和感があるじゃないですか。いや、当然敢えて言及してないんだろうけど。そしてお金の匂いとは、金ピカだけを指しているワケではなさそうなのが恐ろしい。



「ん?やらんぞ」
「ガクガク…ブルブル…」



当人達も自分のことだとわかっているらしい。

ところで今日の夕飯のメインディッシュは黒白二種のハンバーグ。黒い方が辛口デミグラスの悪魔風ソースで、白い方がチーズの風味豊かな天使風ソースとのこと。新鮮なキャベツとカリカリベーコンのサラダ、コンソメスープ…まではいいのだが、何故か一品だけ迷子の料理、その名も「なめろう」。マキナがどうしても食べたいとのことで俺がアジの刺身をたたきにし…味噌としょうが、たっぷりの青ねぎを混ぜた…夕食後の酒の肴にもなりそうな一品。添えられたすだちが秋を感じさせる。まあ…どちらもミンチという共通点があるにはあるんだが。



「遠坂、ひとつ聞いてもいい?」



俺が溜息を吐きながら事情を説明しようとした時だった。震えていた筈のマキナが、遠坂に向かって人差し指を立てている。



「…えっと…貴女は?」
「私はマキナ・カラミタ・グラタローロ。もしくは間久部マキナ。父親はイタリア人、母親が日本人のハーフで年齢は16。2032年現在、USTMiC(閏賀科学技術軍産複合体)という組織に所属している。質問は君のその髪の色について。 地毛?それとも染めてる?」
「……ちょっと待って」



額に手をやり、手振りでマキナを制止する遠坂。…そりゃそうだ、今マキナはとんでもない事実をさらりと白状したのだから。



「アナタなんて言った? 今西暦何年か知ってる?あと、私の髪の毛は地毛よ、染めてないわ」



その答えを聞いたマキナは一度目を丸くして、やんわりと微笑んだ。…一体マキナの知っている遠坂凛は何色の髪をしてたんだ。



「はじめまして、ミス遠坂。私と王様─ギルガメッシュは大体30年後の未来から来ました。士郎達の様子を見る限り、貴女も王様のことは知ってると思うけど…私は30年後の世界で行われた聖杯戦争にて王様をサーヴァントとして召喚、その聖杯戦争が終わった際に、何らかの手違いでこの時代に飛ばされたようです。飛ばされた先が衛宮家の庭で、士郎が快く私達の面倒を見てくれてます。元の時代に戻るまでの間、どうぞよろしく。あと、夕飯が冷めるから先に食べませんか?」



 どうぞ座って、と家主でもないのに着席を促すマキナ。いや、だが自己紹介も含めて今は助かった。というよりは助けられた…か?恐らくマキナは俺が困っているのを察していた。遠坂も、やはり長い溜息は吐いたものの、促されて桜の隣に着席を。ハンバーグもサラダも大皿料理でスープもあまりがあるので、取り皿と茶碗と箸(とスペース)さえあれば急な人数変更があっても幸い対応できるのだ。



「…端的な説明ありがと。未来から来たなんてとても信じられないけど――…皆の反応を見る限り、もう間違いないんでしょうね…。…ところで間久部さん。私の髪の色が染めているかどうして気になったの?」



俺もそれが聞きたい。マキナを見れば、少々思案顔。



「私の知り合いに、同姓同名で髪の色以外は基本瓜二つな子がいるからです」
「30年後の未来に?」
「ええ、声も喋り方もそっくり。ただ髪は豊かなブロンドでしたが」
「「…!」」



眉根を傾げる遠坂と、そんな遠坂に視線を向ける金ピカ以外の一同。まず間違いない、金髪の遠坂を想像している。



「やっぱ遠坂さんの子孫か親戚ですかねー?アレもイイ女です。ただ、瓜二つなんですけど、アイツはどちらかというとAK47(カラシニコフ)と手榴弾が似合いそうなヤツでねー、いや、頭は超イイんですけど、インテリっぽいこっちの遠坂さんとはやっぱりちょっと雰囲気が違うかも」



…この子の口から飛び出してくる言葉言葉がエキサイティング。遠坂がカラシニコフって……なんだ、その未来の遠坂はテロリストか何かか?



「あとちょっと痴女でねー、私の服を脱がそうとしたり、私にディープキスしたり、私の心をレイプしたりと、結構アグレッシブなヤツでしたー」



 アハハハ、と朗らかに笑うマキナ。だが…居間の他の誰も、笑っていない。遠坂の隣の桜も、あたふたとマキナと遠坂とを交互に見ている。…まず間違いなく別人だろうが、瓜二つの自分を痴女呼ばわりされて遠坂が気持ちの良いわけがない。しかし…その未来の遠坂は…その、女色のケがあるのか…?

マキナの言う事をそっくりそのまま信じてもいいのだろうか…。というかマキナ、君は金ピカのことを言えない程に発言が空気読めてません。そして言うまでもなく遠坂の顔つきがかなり不穏になってきたのでこの話題は一度終わりにしよう。



「…まあ、とりあえず…本当に冷めるからハンバーグ早く食べよう」



セイバーもお預けをくらってそろそろ悲しそうだし。遠坂が爆発して食卓が台無しになったり…呑気に痴女呼ばわりしたマキナがその天罰として遠坂と主従契約を結ばされるハメになったり…色々と面倒も起きそうだ。



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